EMC・ノイズ対策技術

高田昌行:岡谷電機産業(株)営業本部技術営業部NSグループ

◆はじめに
 情報化社会と言われる現在、さまざまな事業分野でデジタル化が急速に発展している。コンピューターを中心としたFA・OA機器をはじめ、カーエレクトロニクス機器や携帯電話などの情報通信機器、家庭電化製品では、MD、デジタルビデオ、カラーテレビなどまで本格的にデジタル化が進み、現在インターネットを利用した洗濯機や電子レンジまで製品化され、ブロードバンド化の波が押し寄せている。これらの技術革新によるデジタル化が進む半面、ノイズやサージによるトラブルがクローズアップされている。



◆サージの分類
 サージの発生は「自然型」「人工型」との2種類に分類され、自然型には、誘導雷サージ、静電気などがあり、人工型にはモーター、リレーなどの誘導性負荷のONマイナスOFF、SCRなど半導体を利用する電子的スイッチから発生するノイズなどがある。これらサージ、ノイズを簡略的に定義すると表1のように分類される。これらのサージやノイズ対策には適正な製品を用いて対策する必要がある。
 サージには、サージの持っている電圧や電流により区分され、「外雷サージ」「内雷サージ」「静電サージ」などがある。それぞれ発生するメカニズムに違いがあり、さらにサージエネルギーの大きさに違いがある。
◇外雷サージ
 外雷サージは、雷の落雷により直接被害を受ける直撃雷サージと、雷雲と反対の電荷に誘導されて間接的に被害を受ける誘導雷サージとがある。
◇内雷サージ
 内雷サージは、電気系統内および、回路内に発生するサージ電圧で、地絡事故や負荷遮断、ヒューズ溶断など、系統および回路開閉時に発生する。
◇電磁誘導
 電磁誘導は、近傍に高電流が流れていると、距離の2乗に反比例して発生する。静電誘導は、近傍に高電界があると、距離の2乗に反比例して発生する。
◇静電気
 静電サージは物体や空気などの摩擦により発生し、正電荷と負電荷がそれぞれの物体に蓄電され、その蓄電された電圧が空間距離を超え放電を行う現象である。

表1
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サージ・ノイズの定義


◆雷の発生メカニズム
◇雷の発生する条件
 地表面や水面の温度と大気の温度に摂氏10度以上の差があれば、積乱雲(入道雲)を作り雷が発生する条件が整う。
○寒冷前線による前線性雷
○熱帯性による熱雷
○火山噴煙による火山性雷
○都市の熱エネルギーによる都市性雷
などの雷の種類がある。
 雷は、上昇気流によって雲内部で摩擦による帯電現象が発生し雲の上側ではプラスの電荷、雲の下側ではマイナスの電荷が蓄電され、その蓄積量が臨界点を超えると雷放電(空気の絶縁破壊)が起きる。  図1に示されるように、雲底は比較的低い高さにあり、地上高数百mくらいな位置に発生する。誘導雷は送配電線、電話回線などに静電誘導を行い誘導された電荷は雷雲の移動などにより誘導雷サージとして電線を移動していく。
◇雷の侵入経路
 落雷や雲間放電による強烈な電磁放射が低圧配電線や、TEL回線、屋外に設けられた信号回線などに電磁誘導を行い、機器などの絶縁破壊により侵入してくる。このため、保護されるべき製品機器のサージ対策を考える上では誘導雷サージの侵入経路、誘導雷を逃がす経路、周囲環境などを十分に考慮する必要がある。

図1
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雷雲の負電荷消滅による誘導雷サージ

◆サージアブソーバーの種類
 サージアブソーバーには、気体放電現象を利用したガスアレスター(GA)タイプと、半導体特性を利用したバリスター(MOV)やシリコンサージアブソーバー(SA)の2種類に大別できる。
◇半導体特性を利用したバリスター・シリコンサージアブソーバーの特性
 バリスター(MOV)やシリコンサージアブソーバー(SSA)は、半導体特性を有している素子。バリスターは酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする非直線抵抗素子で、サージ電流耐量および非直線係数が非常に大きく、設定された電圧以下では抵抗が非常に高く、ほとんど電流が流れないが、定められた電圧を超えると急激に抵抗値が低下し大電流を流す。酸化亜鉛バリスターの場合は、抵抗Rが電圧Vによって変化してしまい、グラフが直線にはならない。この特性からバリスターは「電圧非直線抵抗体」という名前が付いている。
 シリコンサージアブソーバーは、ダイオードのアバランシェ特性を利用した非直線抵抗体製品で、洩れ電流が小さくアバランシェ効果は高速応答性があり、立ち上がり電圧に遅れることなく動作する。
 特性の規定はバリスターと同様に洩れ電流値をもって規定している。
◇ガスアレスター(GA)の特性
 セラミックやガラスの容器内部に不活性ガスを封入し、相対向する2つの電極(アノード・カソード)を設け気体放電現象を利用した素子。ガスアレスターの動作規定は直流放電開始電圧(Ez)で示し、電圧を100V〜500V/Secで上昇させた時のガスアレスターのブレイクダウン(放電した)電圧値をもって規定する。このガスアレスターの大きな特徴は静電容量が小さいため、高速データに影響がない。



◆サージ対策部品の進化
 サージ対策部品は、面実装型やユニット化などが増え、小スペース化が進み。通信回線などの対策部品では面実装型のガスアレスター、シリコンサージアブソーバーが急成長している。
◇チップ型アレスター
 RHCAシリーズ(写真、表2)この製品は、45*32タイプのセラミック外囲器の内部に放電電極を設けたチップ型のガスアレスター。サージ耐圧・耐量はEN61000マイナス4マイナス5サージイミュニティの条件で4kV・2kAと非常に大きく、静電容量も0.6pF以下で広帯域にわたりフラットな特性を維持することが可能になり、広帯域にわたるマルチメディア機器や通信・信号ラインのサージ、ESDに対する回路部品保護に貢献できるものと考える。動作電圧は200V、300V、350V、400Vの4種類で、この製品の小型・低容量・耐環境特性などの特徴を生かし、CATV信号入力部、ADSL、ISDLなどの通信機器、情報端末関係などの誘導雷サージ、車載用電子機器のESD対策を目的としている。

写真
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  表2
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チップ型ガスアレスターRHCA
RHCAシリーズ製品仕様


◆サージ対策例
◇通信回線のサージ対策
 図2はModemのサージ対策例である。通信回線間および、回線マイナス接地線間へガスアレスターを接続することによりModem内部へのサージの侵入を防ぎ、サージを吸収させる。また、RS422、LANなどの通信回線は、対話形式などで複数台のコンピューターと接続されているので、それぞれの機器本体の入力される部分で対策を実施しないと効果が半減してしまう。また、データは敏感であるためサージアブソーバーで吸収した制限電圧のエネルギーでもトラブルが発生する場合があり、サージ対策を多段式に設けサージの抑制電圧を最大限に抑える方法を取ることを推奨する(図3参照)。
◇ESD対策
 自動車の通信システムへ侵入する電磁雑音や静電気(以下ESDと称す)の対策には、入力アンテナとグランド間へ接続し、異常電圧(指先などで経験する静電気は7マイナス10kV程度、中には10kV以上の場合もある)グランドへ流す方法がある。ガスアレスターは漏れ電流がなく、静電容量も小さいため、通常受信する電波などへの影響がない。

図2
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  図3
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Modemの保護例
多段保護アブソ−バーユニット


◆今後の製品展開
 一般オフィスでは既にLANケーブルを使用したネットワーク化が一般的になり、今後、一般家庭へもホームネットワーク化が普及するであろう。ケーブルや無線LANといった通信回線ラインを軸に多段保護を施し、高速通信に対応した製品が増えていくと考える。また、コンパクト化が進むデジタル無線通信などが拍車をかけるチップ部品では、絶縁協調の問題は避けて通れない課題であり、今後ますます小型面実装のサージ対策部品が普及すると予測される。






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