高密度実装対応チップ抵抗器の新技術

井関 健:松下電子部品(株)回路部品ビジネスユニット 技術一グループ

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0603ベース多連チップ抵抗器


  ◆はじめに
 携帯電話、デジタルカメラをはじめとする各種モバイル機器の小型軽量化、高機能化が推進展開されるなか、電子部品の高密度実装が進み、チップ抵抗器も、従来の1005サイズから0603サイズを搭載するモバイル機器が急速に拡大している。
さらに微小な0402サイズや、0603サイズでの集積化、すなわち0603ベース多連チップ抵抗器への要望が出始めている。
また、部品点数削減の要望も強く、現在、1005ベース多連チップ抵抗器が主流で使用されているが、0603チップ抵抗器への急速展開が進むモバイル機器では、0603ベース多連チップ抵抗器が使用されるようになってくると考えられる。


  ◆0603ベース多連チップ抵抗器のサイズとプロセス
 0603ベース多連チップ抵抗器は、本来なら2連では0606サイズとするべきだが、チップ分割後の製造ハンドリング性を考慮して0806サイズに(0606正方形サイズでは回転して方向不具合が生じやすい)、4連も本来は1206サイズとするべきところ、リフロー時のハンダブリッジ防止を考慮して1406サイズ(電極ピッチ0.40mmの確保)としている。
次にプロセスであるが、1005サイズ以上の従来のチップ抵抗器と0603チップ抵抗器の工程フローを図1(a)、(b)に示す。
0603チップ抵抗器では、実装品質を安定させるために、従来のチップ抵抗器とは異なり、分割溝がないアルミナ基板に電極、抵抗、保護膜などを形成し、ダイシング&レーザースクライブ工法を用いてチップ分割を行うことによって、形状寸法精度を向上させている(従来のチップ抵抗器は基板分割溝のブレイク工法)。
 しかし、このダイシング&レーザースクライブ工法は形状寸法精度には優れるが、製品厚が厚いと加工が難しいというデメリットを持っている。
0603チップ抵抗器は、製品厚が約0.25mmと薄く加工しやすいが、0603ベース多連チップ抵抗器を考えた場合、多連化で形状が大きくなるため同様な厚みでは、抗折強度が極端に弱くなってしまい、実装時のピックアップや装着、実装後のP板たわみによるチップ割れの問題が心配される。
0603ベース多連チップ抵抗器のサイズは、先述したように2連で0806サイズ、4連で1406サイズと、1005チップ抵抗器と同等サイズ以上となり、 0603チップ抵抗器のように形状寸法精度を優先する必要はないため、製品厚を厚くしても対応できる、基板分割溝ブレイク工法を用いた従来プロセスを採用している。
なお、製品厚は抗折強度と薄型要望を考慮して、1005ベース多連チップ抵抗器と同じ約0.35mmにしている。

図1
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0603チップ抵抗器の製造工程図


  ◆0603ベース多連チップ抵抗器の電極構造
 0603ベース2連チップ抵抗器は、0806サイズの長辺0.80mmに2連電極を形成するため寸法余裕があり、一般的な凸電極構造としている(図2)。
しかし、0603ベース4連チップ抵抗器は、1406サイズの長辺1.40mmに4連電極を形成するため、凸電極形成のために必要な基板孔を2連タイプと同じサイズ(0.15mm幅×0.10mm奥行き)にすれば、凸電極部の幅寸法は1005ベース4連タイプより小さくなり、凸電極部の形成が強度面も含めて難しい。逆に、基板孔を2連タイプより小さくすれば4連電極間隔が小さくなり、リフロー時のハンダブリッジが懸念される。
このため、従来の凸電極構造と異なる、基板孔を設けずにフラットな基板分割側面に4連電極を形成するフラット電極構造を採用している(図3)。このフラット電極構造により、表裏面の電極ライン幅、4連電極間隔ともに1005ベース4連タイプと同等以上とすることができ、製造面の課題である0.40mmピッチ電極形成と、実装品質面の課題であるリフロー時のハンダブリッジ防止を実現することができた。
フラット電極構造は、製品に基板孔を設ける必要がなく、従来の凸電極や凹電極構造の多連チップ抵抗器のように基板孔により製品幅が狭くなる部分がないため、製品抗折強度の向上も図れ、同じ製品厚で凸電極構造の0603ベース4連チップ抵抗器よりも大幅に抗折強度が強い製品になっている(図4)。

  図2
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  図3
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  図4
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0603ベース2連チップ抵抗器
0603ベース4連チップ抵抗器
0603ベース4連チップ抵抗器の抗折強度


  ◆フラット電極の形成工法
 フラット電極の形成は、ゴムローラーの表面に設けた複数の凹溝に電極ペーストを充填し、そこに製品側面を接触させて電極を転写形成するという工法を用いている。
ゴムローラーの材質、溝幅と溝深さ、製品側面との接触圧、および電極ペーストの導電粒子径等の仕様などが、フラット電極の寸法精度、品質を決定する重要なポイントになる。



  ◆0603ベース多連チップ抵抗器での高密度実装
 実際に、0603ベース4連チップ抵抗器を当社でマウンター実装テストした結果は、実装率99.99%以上と良好なもので、またランドに対して故意に0.10mm位置ずれさせて実装した、ハンダリフロー試験でも、セルフアライメント効果を発揮して、ハンダブリッジのない良好な結果を示している(図5)。
0603ベース多連チップ抵抗器の高密度実装レベルは、 1005チップ抵抗器と比較すれば大幅な面積削減効果があるが、0603チップ抵抗器と比較すると効果は小さく、4連タイプでは面積削減に十分貢献できるが、2連タイプでほぼ同等レベルとなっている(図6)。
これは、0603チップ抵抗器では製品隣接間隔0.15mmの高密度実装を行うのが一般的になっており、多連化のメリットであった製品隣接間隔の削減効果が薄れてきているためであるが、もう一つの多連化のメリットである部品点数削減には多大な貢献が期待できる。

図5
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  図6
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0603ベース4連チップ抵抗器のリフローハンダ試験
0603ベース多連チップ抵抗器の実装面積比較


  ◆今後の展望
 0603チップ抵抗器をベースに考えた場合、さらなる高密度実装の展開は0402チップ抵抗器が最有力ではあるが、0603ベース多連チップ抵抗器の抵抗特性、実装性での優位を考えれば十分に魅力的であるとともに、集積度を上げることにより、高密度実装でも優位になれると考える。
とくに、今回開発したフラット電極構造によって、凹凸電極構造では支障となる狭ピッチ電極形成の課題がなくせるため、2012サイズにプルアップ抵抗8素子内蔵や、抵抗とコンデンサーのRCローパスフィルターを4回路内蔵のような(図7)、従来のチップ抵抗器と同等の汎用的な特性と実装性を持ちながら、0402サイズチップ抵抗器と同等以上の高密度実装を実現できる超集積チップ抵抗器製品への展開が期待できると考えている。

図7
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2012サイズ高集積チップネットワーク

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