普及が進む組込みバスマーケットの新しい動き
第3の組込み標準バスATCA、追加の規格相次ぐ



2005年後半に入り、組込みバスマーケットにおいて新たな動きが活発になってきている。今回は従来のVME/VME64xバスやCompactPCIバスに続く、第3の組込み標準バスのAdvancedTCA(略称=ATCA)バスの規格動向を中心にその追加規格の状況をリポートする。

マーケットの支持を受けるAdavancedTCA

次世代テレコムシステム向けバス・アーキテクチャとして策定されたPICMG3.0(規格名:AdvancedTCA、略称=ATCA)が実用段階に入ってきた。北米、欧州、日本を含むアジアパシフィック地域からATCA規格を採用した装置が本格的に市場に出荷されてくる。このようなATCA規格製品の追い風状況を受けOSC(Open Standard Chassis)市場が、およそ年2億ドル(2004年)の市場規模から2009年には年数十億ドル規模になると見込むという市場調査結果もある。

これは、経費削減が非常に強く要求されている通信サービス、データセンターやインターネットプロバイダが「経費削減のために標準規格品が有効」との認識が高まってきていることが最も大きな要因と考えられている。また、このような認識は、BRICsと呼ばれる新興工業国にも浸透しており、それら地域の通信インフラ環境の整備にもATCAを採用した装置の出荷が増えていることが大きな要因となっているようだ。

当面、ATCAを牽引するのは通信業界だが、医療、軍事・宇宙システム業界にもATCAが広がり、最大の組込みバス市場とされるエンタープライズ業界にも普及すると予測されている。PICMGにおいても、これらの市場の状況と呼応するかのように、次から次へと新しい追加規格が検討され、一部は既に規格化もされている(表1参照)。


〔表1〕PICMG最新規格動向

次々発表されるAdavancedTCAの追加規格

コア規格のPICMG3.0と同時に発行された、データ転送の技術的規格であるPICMG3.1/3.2/3.3だけでなく、ハイエンドのPCに組込まれているPCI Expressと通信の組込み用にアドバンスド・スイッチング技術とを合わせたPICMG3.4を規格化し公開している。また、PICMG3.5としてRapidIOを、PICMG3.6としてセルスイッチングと新たなバックプレーンデータ転送規定を検討している。現行のCompactPCI規格上にATCAの電気的仕様を盛り込もうとするCompactTCAをPICMG2.50規格として検討中である。

ATCAの8Uカード上に対しても、CompactPCIバスで使用されているPMCに相当するメザニンカードの規格としてAdvanced Mezzanine Card(略称AMC)を規格化済みである。これもバックプレーンデータ転送規定と同様にAMC.0がコア規格となり、追加規格としてAMC.1/.2/.3/.4が規定および検討中である。

AMC.1がPCI ExpressとAS(Advanced Switching)、AMC.2がイーサネット、AMC.3がストレージ、AMC.4がRapidIOをそれぞれAMC上で実現するための規格となっており、AMC.1については既に規格化済みである。加えて、そのメザニンカード自体を小型シャーシに入れて使うMicroTCAと呼ばれる規格も検討されており、システム構築側の選択肢がどんどん広がっている。

これら以外にもPICMGからはCompactPCIのメカニカル上でPCIエクスプレスを組込もうとする規格がPICMG_EXP.0として、また、PICMGパッシブマザーボードの規格としてCOM ExpressがPICMG_COM.0として既に規格化されており、順次商品化が始まるであろう。

※PICMGおよびCompactPCIの名称、PICMG、CompactPCIのロゴは、PCI Industrial Computers Manufacturers Groupの登録商標。
AdvancedTCAおよびATCAの名称、AdvancedTCA、ATCAのロゴは、PCI Industrial Computers Manufacturers Groupの商標。