高密度実装技術
高密度実装向けセカンダリLDOレギュレータの開発


<セカンタリLDOレギュレ一夕による低消費電力設計>(写真1)


〔写真1〕セカンタリLDOレギュレ一夕シリーズ

セットの小型化、高性能化、多機能化が進む今、セット内部に使用される電源電圧も多様化する傾向にある。テレビにおける地上デジタル放送対応や、DVDレコーダにおける多チャンネル録画機能の台頭は、マイクロコンピュータやデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を高速/高機能化するだけでなく、大規模な回路フロックも要求される。

高速化によるASICの微細化は使用される電源電圧の低電圧化を必要とし、大規模な回路ブロックは電源電圧の多様化を必要とする。

これらを解決する手段として、スイッチング電源で中間電位を作り、各LSIの電源をLDOレギュレータで作る動きが出ている。DC/DCコンバータで高い入力電源から5V程度の電圧をいったん作り、リニアレギュレータを使用して3.3〜1.0Vの電圧を作る電源構成がよく採用されている。

このようなレギュレータをセカンダリ・リニア・レギュレータという。

このレギュレータは、これらの電源を必要とするデバイスの近くで低い入力電圧からより安定した電源を供給する。DC/DCコンバータでダイレクトに低い電圧を供給するよりも、セカンダリ・リニア・レギュレータ方式で構成する方が、安定、かつ低消費電力設計が実現できるという利点がある(図1、2)。


〔図1〕セカンダリLDOレギュレータを使用する場合


〔図2〕セカンダリLDOレギュレータを使用しない場合

ロームはこのセカンダリ・リニア・レギュレータに最適なレギュレータとしてBD□□KA5シリーズ、BH□□PB1シリーズ、BH□□RB1シリーズを開発した。

<セカンタリ用低飽和0.5Aレギュレータ:BD□□KA5シリーズ>

セカンダリレギュレータに求められるのは、省スペースと安定性、そしてDSP等の狭い入力電圧範囲に対応するための高精度化である。このBD□□KA5シリーズは500mAの電流能力でありながら、出力の位相補償用コンデンサを1μF小型セラミックコンデンサ対応とし、省スペース化を実現している。また、ローム独自のトリミング技術の採用により、出力電圧ばらつきを高精度の±1%を実現した。

さらに、出力をドライブするトランジスタにP-channel MOSトランジスタを採用することにより、負荷電流が増加しても回路電流を抑えることができ、熱設計に対して有利である。入力範囲は2.3〜5.0Vであり、3.3V系・5V系の電源入力に最適である。

また、出力電圧も1.0V、1.2V、1.5V、1.8V、2.5V、3.3Vおよび可変出力タイブと低電圧出力からのラインアップを充実させている.パッケージはTO252とSOP8の面実装タイブで小型化を実現した(図3)。


〔図3〕BD□□KA5シリーズのパッケージおよび回路図

<オートパワーセーブ機能付き超小型CMOS LDO レギュレータ:BH□□PB1シリーズ>

また、セットでは機能の増加とは別に低消費電力化、樽に待機時の無駄な電流消費を抑える要求が大きい。これに対し、BH□□PB1シリーズでは、オートパワーセーフ機能により、待機時の消費電流を大幅に軽減し2μAを実現している。オートパワーセーフ機能とは出力電流を常にモニターし、低消費電流用レギュレータと高速動作用レギュレータを、セットの状態に合わせ最適な方を自動的に選択するハイブリッドシステムである。

この機能により、マイコンが間欠スリーブ状態の待機時など、低消費電流が求められる時には、自己消費電流を1/10以下の約2μAまで低下することが可能である(図4)。


〔図4〕BH□□PB1シリーズの電圧変換効率

オートパワーセーブ機能を内蔵することによって、ポータブル機器の待機時の超低消費電力化を実現し、かつ新開発の超小型ハイパワーパッケージに0.47μFの出力用セラミックコンデンサを使用可能としたことによって、高密度実装化をも両立させている。出力電流150mAで出力電圧は1.2V、1.5V、1.8V、2.5V、2.8V、2.9V、3.0V、3.1V、3.3Vの固定電圧タイブをラインアップしている。

このHVSOF5パッケージのサイズは1.6×1.6×0.6mmと超小型であるが、放熱板を内蔵することで410mWという高い放熱性を実現している(基板実装時)(図5)。


〔図5〕小型・薄型ハイパワーパッケージ:HVSOF5と従来品との比較

セカンダリ電源では、使用するモードに応じてON/OFFすることがよくあるが、ONからOFFに切り替わる時間が約10msecと短縮した。これにより、ON―>OFF―>ONといった急峻なシーケンスであってもレギュレータ立ち上がり前の出力電圧は確実にOVとなり、パワーONリセット等を備えたセットの起動シーケンスをより安定化させることができる。

<高密度実装向け超小型CSPCMOS LDOレギュレータ:BH□□RB1シリーズ>(写真2)

〔写真2〕超小型CSPパッケージ「BH□□RB1シリーズ」

BH□□RB1シリーズでは、さらに小型化を図るためにCSP(チップサイズパッケージ)でのシリーズとなっている。出力コンデンサも1μFのセラミックコンデンサ対応にすることで高密度実装を可能にしている。Bi-CMOSプロセスを採用することによって無負荷時回路電流34μAを実現し、CMOS構造の出力トランジスタを最適化するとともに、回路技術でON抵抗を下げることで儼d=100mV(Io=100mA)を実現し、より低い入力電圧までレギュレートが可能になり、セットの低消費電設計に貢献できる。

出力電流150mAで、出力電圧は1.5V、1.8V、2.5V、2.8V、2.9V、3.0V、3.1V、3.3Vをラインアップしている。

パッケージサイズは1.0×1.04×0.6mmとさらに小型であるが、540mWの高い放熱性を実現している(基板実装時)(図6)。


〔図6〕超小型CSPパッケージ:VCSP60N01と従来品との比較

<2出力LDOレギュレータ:BA3258/3259シリーズ>

セカンダリ・レギュレータの実装密度をさらに向上させるために、2回路入りLDOレギュレータとしBA3258/59シリーズを開発した。5V程度の入力電圧から2電源タイプのマイコンや2電源のアプリケーションに供給する用途に最適である。2出力ともに電流能力1Aで、出力には小型のセラミックコンデンサ1μFが使用可能である。

パッケージはTO252C-5、HRP5、TO220CP-V5と面実装と挿入の両タイブを取り揃えている。HRP5パッケージは、高さが2.Ommと従来のTO252に対しさらに薄くなっていながら、放熱方法の工夫により2.3Wの高い放熱性が実現できている(図7、8)。


〔図7〕2出力タイプ:BA3258/BA3259シリーズのローカル基板での使用例


〔図8〕薄型パッケージ:HRPと従来品との比較

<まとめ>

このようにロームの高性能セカンダリLDOレギュレータはあらゆるセットの省エネルギー化、小型化に貢献できる。今後もさらなる高性能を目指し、高効率・低消費電力・小型化といった世の中のニーズに合致した製品の開発を幅広く行っていく方針である。

<ローム貝SI商品開発本部>