小型DC-DCコンバータ「CC-Eシリーズ」 <はじめに> 永遠の課題である電子機器の小型化、これを実現するためTDKでは、第5世代となる標準品DC-DCコンバータ「CC-Eシリーズ」を開発・商品化した。TDKではお客様のニーズに応えるため、標準品DC-DCコンバータの電力密度を世代ごとに上げていき、小型化してきた(図1参照)。 〔図1〕電力密度の推移 1977年、標準品DC-DCコンバータがなかった当時、TDKでは、いち早く標準品の商品化を行い小型化を世代ごとに進め、今日に至っている。 長年にわたり蓄積してきた、標準品DC-DCコンバータでの部品技術、回路設計ノウハウを最大限に生かし、開発・商品化した第5世代DC-DCコンバータ「CC-Eシリーズ」をここでは紹介する。 「CC-Eシリーズ」は、現行モデル(第4世代CCシリーズ)に比べ、基板占有面積を33〜52%削減した(図2参照)。
ここまで小型化できた理由は、「低発熱・高効率設計」と「小型部品の採用・高密度実装」を実現したことにある。 「低発熱・高効率設計」については、小型・低損失部品の採用と徹底した高効率回路設計により高効率を実現した。 出力電力1.5Wモデルで第4世代と第5世代を比べると、第4世代の効率が約68%に対し、第5世代CC-Eシリーズは、約77%と10%近く高くなっている(図3参照)。 〔図3〕効率比較 また、基板の鋼箔層を現行モデルより厚く設定し、パターン抵抗を減らすとともに、熱伝導性を高めてホットスポットが発生しないよう工天を施した。 このことにより、現行モデルの第4世代で熱の放散を目的に充填していた樹脂が不要となり、部材・工程削減によるコストダウン、生産リードタイムの短縮とともに大幅な軽量化も同時に実現した。 DC-DCコンバータのキーパーツのひとつであるトランスでは、1.5W、3W、6Wモデルで、100℃近傍に業界最小レベルのコアロスピークを設定した低損失フェライトPC47材(図4参照)を使うことにより、DC-DCコンバータの効率向上を行っており、10W、15W、25Wモデルのトランスに対しては、350kHz以上の帯域で際立つたローロス特性(Pcv=80kW/m3at500kHz/500mT/80℃)を発揮するPC50材を適用し、回路方式や負荷の大きさに最適なトランス特性を追求した。 〔図4〕コア損失 「小型部品の採用・高密度実装」については、入出力コンデンサに自社開発品である大容量積層セラミックコンデンサを採用した。温度特性]7R特性・3216形状の量産標準品として業界トップクラスの10μFを達成した大容量タイブなどが、今回の小型化に寄与している。現行モデルでは、出力コンデンサにタンタルコンデンサを使用しているが、今回の第5世代では、経時劣化を避けられない電解コンデンサやタンタルコンデンサは一切使用せず、信頼性を高めている。 また、CC-Eシリーズでは、基板エッジ部に省工程、省スペースで接続端子を強固に取り付ける新たな端子形状と自動化接続工法を開発した。第4世代では、角ピンを基板エッジより内側に圧入していた。このため、端子と基板エッジとの間がデッドスペースとなっていた。 CC−Eシリーズでは、このデッドスペースをなくし小型化を図っている(図5参照)。
<使用温度範囲を拡大し、設計に新用途と余裕を提供> 現行モデルの動作環境温度範囲が-20〜+70℃であったのに対し、CC-Eシリーズでは、-40〜+85℃と大幅に拡大させた(図6参照)。 〔図6〕周囲温度範囲 これにより、DC-DCコンバータを搭載した機器の環境温度範囲が荘がり、使われる用途の自由度が広がる。今まで屋内でしか設置できなかった機器が、屋外に設置することも可能となるケースがでてきた。 温度ディレーティングは、現行モデル同様、50℃を超える動作環境温度においては出力電力のディレーティングに配慮する必要がある。 しかし、現行モデルをCC-Eシリーズに置き換えることで、最大出力を一気に1.7〜2倍にはねあげることができる。 例えば、現行モデルの3Wを使っていた場合、ピンコンパチであるCC-Eシリーズ6Wを実装することにより、最大出力を2倍にすることができる。 つまり、今まで現行モデルで50℃以下の環境下で3Wを使っていた装置が、CC-Eシリーズ6Wに置き換えることで約79℃の環境下まで使用することが可能となる。 CC-Eシリーズの3W、6W、10Wモデルは、それぞれ現行の1.5W(CCK)、3W(CCM)、6W(CCN)モデルと容易に置き換えられるピンコパチブル使用*である(図7参照)。 〔図7〕ピンコンパチブルの一例 (*金属ケース側面に備えた固定用端子の配置は一部異なる)もちろん、機器の動作環境温度がディレーティングを無視できる50℃以下であれば、現行モデルと同様以下の基板占有面積で1クラス上の出力(1.7〜2倍)をフルに活用できる。 DC-DCコンバータの負荷として代表されるIC、このICの電源電圧の変動幅は一般的に±5%程度に設定されている。現行モデルは、出力電圧の設定精度が±5%であったため、DC-DCコンバータは負荷であるICの近くに実装し、プリント基板の配線による電圧低下を極力小さくする必要があった。 CC-Eシリーズでは、これに注目し、出力電圧精度を単出力品種で±3%(15Wと25Wは、+5%、-3%)とした。これより、2%程度の電圧低下が起こってもICは安定動作を確保できる。 機器の多機能化にともない機器内部には、多くのICを含めた部品が高密度実装され、DC-DCコンバータを実装する場所が限られてきている。理想的にICの近くにDC-DCコンバータが実装できないケースも増えてきている。 この課題を解決するため、多少DC-DCコンバータとICが離れていても、2%の余裕があるので、自由に配置することが可能となる。 また、機器の高密度表面実装化に対応するたこめ、CC-Eシリーズでは、現行モデルと同じDIPタイプに加え、接続端子を高精度にフォーミングしたSMDタイブも同時にリリースした。 RoHS指令対応*の制限対象6物質にPVC(塩化ビニル)を加えた7物質の使用を全廃した。また、DC-DCコンバータ標準仕様モデルとしては業界初となるハロゲンフリー基板を1.5〜10Wモデル全品種に採用した。(RoHS指令対応:EU Directive 2002/95/ECに基づき、免除された用途を除いて、鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、および特定臭素系難燃材のPBB、PBDEを使用しないことを表す) 安全規格は、UL60950-1、C-UL(CSA22.2 No.60950-1)、EN60950-1を取得している(10Wモデルのみ申請準備中)。 <花房一義:TDK(株)パワーシステムビジネスグループパワーサプライBUモジュール部1グループ> |