特集:カード用コネクタ技術

メモリーカード用コネクタの技術動向
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 携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラ、DVC、ノートPCなどの小型高性能端末向けに、メモリーカードの需要が増加している。完成品メーカーの多様な要求に対応するため、コネクタメーカーではメモリーカード用コネクタの製品バリエーション拡充に注力しており、小型・薄型形状の追求やユーザーの使い勝手向上、高強度、安全性向上などを重視した製品バラエティの拡大が進んでいる。

  コネクタメーカー各社では、接点技術や精密加工技術、信頼性評価技術などを生かし、高性能な小型メモリーカード用コネクタの開発に力を入れており、接点の高信頼性や高着脱フィーリング、小型・薄型化対応、高いコプラナリティなどに向けた技術開発を追求している。

  特に、市場要求の強い小型・薄型や多様な実装形態への追求を進めるとともに、セットの基板のはんだ厚みの薄型化に対応するための端子のコプラナリティ向上などに向け、設計段階からの取り組みを進めている。

  同時に、大容量・高速伝送対応に向けた次世代メモリーカード仕様に照準を合わせたマーケティングや技術開発も進みつつある。

<SDメモリーカード>
  メモリーカード搭載機器は02年頃から普及が加速し、以後、数年間にわたり、高水準でのグローバル需要の増加が続いている。中でも、主力のSDメモリーカードは、デジタルカメラやDVCをはじめ、リーダー/ライター、パソコン、携帯電話、スマートフォン、テレビ、ディスクプレヤー、カーナビゲーションシステム、ディスクプリント、オーディオ、ボイスレコーダなど、さまざまな機器に搭載され、需要が拡大している。

  SDメモリーカードは、1999年に米サンディスク、パナソニック(当時は松下電器産業)、東芝の3社が共同開発した規格。サイズは縦32mm×横24mm×厚さ2.1mm。06年6月には新規格の「SDHCメモリーカード」規格が策定された。これにより、従来は2GBまでの容量制限があったが、32GBまでの容量が実現できるようになった。すべてのSDメモリーカード(SDHCを含む)は著作権保護機能のCPRMを標準装備しており、配信コンテンツや放送コンテンツの記録に柔軟に対応することができる。

  メモリーカード用コネクタは基本的にカスタム性が強い製品。このため、コネクタメーカーではバラエティを重視し、小型・低背設計やイジェクトバリエーション、リバース/スタンダードタイプ、インナーターミナル構造、誤挿入防止機構、カード検知スイッチ付き、カード無理抜き防止構造やカード脱落防止機構、EMI対策強化など独自のアイデアを取り入れた使い勝手の良い製品開発に力が注がれている。

  最近は、携帯電話をはじめとするモバイル端末の極薄化ニーズに対応するため、極限までのコネクタ低背化を目指した新製品開発が活発。超低背かつ接触信頼性や製品強度、挿抜性に優れた製品開発に力が注がれている。薄肉成形加工技術やシミュレーション技術などを活用し、成形樹脂の流動解析シミュレーションによる最適な部品形状の検証や、最適な製品外形とひねり強度を高めるための樹脂溶着条件の決定、端子の接触信頼性を確保するための接点圧の検証など高度な技術開発が進んでいる。

  メモリーカード仕様の今後の方向性は、大容量化と高速化。これらのニーズに対応したハイスペックカードの規格化が進んでいる。

  SDメモリーカードでは、今後は大容量化を図った「UHC(ウルトラハイキャパシティ)」や、大容量化と高速化を組み合わせた「UHS(ウルトラハイスピード)」仕様品なども製品化される見通し。2TB(テラバイト)の大容量SDメモリーカード「SDXC」などの開発も進められている。

  コネクタ業界では、これらの動きに対応し、次世代ニーズに照準を合わせた高速伝送対応の専用コネクタの新規開発やマーケティングが進んでいる。

<マイクロSDカード>
  マイクロSDカードは、SDカードファミリーの超小型メモリーカードとして、SDカードアソシエーション(SDA)により規格化された。従来、携帯電話に多く搭載されていたミニSDカードに代わり、携帯電話搭載用の中核的な超小型メモリーカードとして、ここ数年、グローバルで大きく需要が拡大している。

  マイクロSDカード用コネクタも、SDメモリーカード用コネクタ同様、ユーザーニーズに合わせた多彩なバリエーションが必要とされ、プッシュ―プッシュタイプ、手差しタイプ、ヒンジタイプなどさまざまな形態のコネクタが製品化されている。

  携帯電話の薄型・高機能化に伴い、マイクロSDカード用コネクタに対する薄型化要求も強いものがあり、コネクタメーカー各社では、100分の1ミリメートルレベルでの薄型化追求と高信頼性との両立をポイントとしたマイクロSDカード用コネクタの新製品開発が活発化している。

  すでに製品高さ1.4ミリメートル程度の超薄型マイクロSDカード用コネクタの本格的な量産が始まっており、プッシュ―プッシュイジェクト方式のスタンダードマウントタイプでは、高さ1.3mm程度の超薄型構造のマイクロSDカード用コネクタも製品化された。

  コネクタ各社では、モバイル機器搭載時の耐落下衝撃性の向上や、接点の信頼性向上、ユーザーの使い勝手の向上のために、高度な機構設計技術を駆使したマイクロSDカード用コネクタ新製品開発を推進している。挿抜回数の長寿命化などの追求も進められている。

  マイクロSDカードは、対応アダプタ需要も大きく、コネクタ各社はマイクロSDカード用アダプタ開発にも注力している。

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<メモリースティック>
  メモリースティックは、ソニーにより提唱された規格。サイズはスタンダードサイズが縦21.5mm×横50mm×厚さ2.8mm、小型モバイル機器用途向けに開発されたメモリースティックDuoサイズが縦20mm×横31mm×厚さ1.6mmとなっている。

  メモリースティックPROは、高品質の動画や音楽のデジタルコンテンツを長時間楽しむために、ソニーとサンディスクにより共同開発されたもので、高容量、高速転送が大きな特徴。メモリースティックPROフォーマットを拡張した、さらに高速のPRO―HGなども規格化されている。

  携帯電話用では超小型カードのメモリースティックマイクロが製品化されており、コネクタメーカーではメモリースティックマイクロ用コネクタのバラエティ拡充を推進している。マイクロSDカードと同様、メモリースティックマイクロ用の専用アダプタの需要もある。

<マルチメディアカード>
  マルチメディアカードは、1997年にドイツのシーメンスとサンディスクが共同開発した規格。1998年はNEC、日立製作所、米モトローラ、フィンランドのノキアの各社が加わり、業界団体の「MMCA」(マルチメディアカードアソシエーション)が設立された。

  サイズは縦32mm×横24mm×厚さ1.4mm。マルチメディアカードはマルチデバイスに対応しており、最大30枚までのカードを接続できる。認証機構を内蔵したセキュアMMC、小型携帯機器に適したRS―MMC(縦24mm×横18mm×厚さ1.4mm)、ICカードを内蔵して決済機能を持つMOPASSカードも提案されている。MMCプラスなどのハイスペックカードの規格化も進んでいる。

  携帯電話への搭載が可能な超小型形状のMMCマイクロも規格化され、欧州市場向けの携帯電話を中心に需要が拡大している。

<コンパクトフラッシュ>
  コンパクトフラッシュ(CF)は、1994年にサンディスクが提唱した規格。コントローラICとフラッシュメモリーICを実装した基板を丈夫な金属ケースに収めた構造で、サイズは縦36.4mm×横42.8mm×厚さ3.3mm。厚さが5mmの「タイプ2」という規格があるが、メモリーカードの場合は、厚さ3.3mmの「タイプ1」が主流。

  コネクタは信頼性の高いツーピース構造で転送速度が速いため、現在でも一部のデジタル一眼レフカメラのほか、工業機器などの各種業務用の用途などで使用されている。


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