車載用半導体 

技術が進化「安全・快適・環境」支える

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 「安全・快適・環境」という3つトレンドで進化する自動車に向けた半導体デバイス技術の開発が活発化している。自動車の進化は、電子化によるところが大きく、自動車に搭載される半導体デバイスの数、量は、ますます増加し、車載向け半導体デバイスの進化が自動車の進化に直結しつつある。特に、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)といった次世代車での半導体デバイスの役割は、従来以上に大きい。また、運転支援・走行制御、車車間・車路間通信といった自動車に新たな価値を加える技術でも半導体デバイス技術がカギをにぎり、注目を集めている。

 自動車の電子化は、あらゆる部分で進んでいる。カーオーディオやナビゲーションシステムなど車載情報系や、ダッシュボードや電動ミラーなど車体制御系、さらには、エンジンやブレーキなど走行に関わる制御分野でも半導体技術は欠かせない存在になった。例えば、自動車に搭載されるマイクロコントローラの数は高級車などで100個を超えている。そして、ハイブリッド車、電気自動車では、使用される半導体デバイスの数はさらに増える。

パワーデバイスに注目
ハイブリッド車や電気自動車は、従来のエンジンとは別に、電気をエネルギーとして、電動モーターを動力源に使用する。当然、ハイブリッド車や電気自動車で不可欠なモーター、電池の制御、監視は半導体デバイスが担う。特にキーパーツの一つとして注目が集まっている半導体デバイスに、モーターの制御インバータに用いるパワー半導体「IGBT」(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)がある。

IGBTは、様々なスイッチング素子の中で、比較的耐圧が高く、スイッチング速度も速く、電力損失が小さいという特徴を持ち、数万から数十万kWの出力を要求されるHEV/EVモーター分野でも使用されている。

HEV/EVの省エネ性を高めるためには、IGBTの電力損失をさらに抑える必要がある。各IGBTメーカーはトレンチゲート構造を用いた上で、電力損失の要因であるオン抵抗低減に向けた微細加工技術の導入を進めるなどし、さらなる高効率IGBTの開発に注力している。

さらに革新的な高効率デバイスの実現に向け、従来のシリコンよりも大幅に低損失化が図れるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった新素材を用いたパワーデバイスの開発に着手。これら新素材を用いたパワーデバイスとしては、まずダイオードが製品化され、産業用途などで採用が始まっている。自動車分野での応用は、信頼性評価などに時間を要するため、数年後の普及が見込まれる。ただ自動車と同等以上の安全性が求められる鉄道分野での応用が一部始まっており、将来の自動車への搭載は確実視される。

バッテリに向けた半導体としては、HEV/EVに搭載されるリチウムイオン電池向けの監視ICが新たに必要となっている。リチウムイオン電池は携帯電話など民生機器でも用いられるが、セル数は1―5セル程度。一方、自動車では100セル近い規模となるため、1つのICで、より多くのセルを監視・制御できる製品開発が不可欠。その上、自動車の安全性、電池寿命を延ばす高い精度で各セルをモニタリングする必要があり、車載半導体分野の中でも最も高い技術力を要する分野の1つになっている。すでに12セル対応の監視ICが実用化されている。

走行支援機能の搭載活発化
自動車の走行制御系統がエレクトロニクス化されることで、車載情報系統との連携も図りやすくなるため、車載情報系統でも新たな変化が始まっている。現在、車載情報機器は「走行支援機能」の搭載が活発になっている。なかでも車載カメラの画像を車載情報端末で認識、解析し運転支援に役立てる「画像認識技術による走行支援機能」が実現されつつある。画像認識システムは、1秒間に10枚上の画像をリアルタイムで処理する必要があり、従来にない高度な並列処理技術が必要となっている。すでに100個を超えるプロセッサを搭載した画像処理LSIや、ナビゲーション用LSIに画像認識回路を搭載した製品が登場し、白線検知などの運転支援機能が実用化され、今後は、昼間の歩行者認識などより本格的な運転支援システムが登場する見込みとなっている。

さらに走行支援機能を補完、強化する目的や自動車の利便性を高めるため、車外の車や路面などのインフラ、インターネット網と接続する通信技術の開発も進む。欧州や北米では、GSMなど携帯電話通信網を活用したテレマティックスシステムが今後2マイナス3年のうちにも実用化される見込みで、対応半導体の製品化が開始されている。