ワイヤレス関連デバイス

 ワイヤレス技術の応用は、携帯電話をはじめ、無線LAN、Bluetooth、GPS、RFID(無線タグ)、ZigBee、UWB、WiMAXへと広がりを見せている。また多様なワイヤレス技術の登場に伴い、人と人を結ぶコミュニケーションだけでなく、機器と機器を結び通信する「マシンtoマシン」(M2M)といった使用も始まっている。技術開発の方向性も高速通信、長距離伝送に向けた技術開発だけでなく、通信速度は遅いながら超低消費電力化、超小型化などの方向性からも開発が進められている。半導体・部品各社も多様なワイヤレスネットワークニーズを実現する技術、製品の開発を強化している。

【高速無線通信】
無線通信は近年、様々な技術が開発され、用途に応じて様々な無線通信技術が使用されている。またそれぞれの無線通信は、その特徴をさらに生かす形で進化を遂げている。

無線通信の代表例である携帯電話用通信は、世界的に2.5G(第2.5世代通信方式)から3G、3.5Gへと移り、4Gの時代を迎えつつある。4GのLTE(ロング・ターム・エボリューション)は、毎秒150Mビットの伝送速度を誇り、ワイヤレスブロードバンドの実現に期待がかかる。

2010年にLTEを用いたサービスが開始され、従来の3G/3.5Gに加え、LTE用RF回路を搭載したデバイスも開発され本格的な製品化がスタートしている。

高速無線通信基地局に向けたデバイスの進化も加速している。例えば、周波数を生成する周波数シンセサイザでは、PLL(フェーズ・ロックド・ループ)シンセサイザでは10Gヘルツを超える高周波対応品が開発されている。また周波数を瞬時に可変生成できるDDS(ダイレクト・デジタル・シンセシス)シンセサイザでも1Gヘルツを超える周波数生成に対応した製品が登場している。さらに、アナログ回路を使わない「TimeマイナスtoマイナスDigital(TDC)コンバータ」を利用したシンセサイザも登場してきている。従来、アナログ回路とデジタル回路で構成されていた高周波発振器も微細化が進むとアナログ部分の設計難易度が高まり、回路面積の削減も難しくなる。デジタル化をすることで回路面積の削減などが期待できる。

衛星通信の用途では、基地局の小型化に貢献する「窒化ガリウム」(GaN)を用いた電力増幅器の応用が始まっている。GaNは、従来増幅用デバイスに用いられてきたガリウムヒ素(GaAs)に比べ、電気的特性に優れ、高耐圧/高出力、高効率を実現しやすいといった特徴があり、今後主流となる見込みだ。

【ワイヤレスM2M】
無線技術は、M2Mの実現に向けて重要な要素となっている。電力などのエネルギーの消費を監視、制御するエネルギーマネジメントシステムなど、様々な事象をセンシングし、そのデータを蓄積、活用するM2Mネットワークを広範に広げるには無線通信が不可欠となる。

M2Mシステムに向けた無線通信に求められる要素は、通信速度よりも、低消費電力性能やコストが優先され、M2Mに向けた無線通信技術が開発される。

その1つが、ZigBeeであり、乾電池1つで数カ月〜数年というレベルの低消費電力性能を持ち、M2Mネットワークでの応用が期待されている。また、M2M向けの新たな無線通信として、7月から国内で利用可能となる「920Mヘルツ帯無線」も大きな注目を集めている。

ZigBee、ブルートゥースなどで使用される「2.4Gヘルツ帯無線」に比べ、920Mヘルツ帯無線は、電波の回り込み特性が優れ、壁などの障害物のある場所でも安定した通信を確保しやすく、より少ない電力で、長距離通信が実現できるなどの利点を持つ。

そのため、ZigBeeなどの2.4Gヘルツ帯無線では通信が難しかった環境に対し、920Mヘルツ帯無線で補完することが可能になるため、M2Mシステムの普及を後押しすると期待されている。

これらのM2M向け無線通信用デバイスでは、すでに動作電圧で2Vを切り、ピーク電流もミリアンペアクラスに抑え、ボタン電池駆動対応の小型デバイスで実現する無線通信技術も登場している。腕時計など従来は無線機能搭載が難しかった用途でも他の機器と連携できる技術として、世界的に注目の集まるヘルスケア用途などでも応用が期待されている。