PLD/FPGA

 電子機器の多様化、製品ライフサイクルの短期化が進む中で、回路構成を変更できる半導体デバイス「プログラマブル・ロジック・デバイス」(PLD)の市場が拡大している。なかでも、PLDの代名詞ともなっている「FPGA」(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)は、技術革新がめざましく、その適用範囲が広まっている。

 様々な電子機器に搭載されるロジックデバイスは、電子機器の多機能化、高性能化に伴い規模が拡大している。その一方で、スピーディな市場投入が競争力に直結する民生機器などを中心に、機器の開発期間は短縮しなければならず、ロジックデバイス開発はより困難な状況となっている。

 その中でPLDは、何度もロジックの変更が行えるという利点により、製造に数カ月かかるASIC/ASSPを開発する際に、プロトタイプ(試作)としてPLDを使用。PLDで動作実証された回路を、ASIC/ASSP化し、開発の手戻りを防ぐなどの効果で開発期間の短縮が図られてきた。

最終製品に搭載のケースも
規模の増大、開発期間の短縮化の流れが一層加速する中で、PLDを試作用途に限らず、最終製品にもPLDを搭載するケースも一般化してきた。従来は、ASICやASSPといったロジックLSIに比べPLDは割高で、最終製品への搭載は現実的ではなかった。ただ、ロジックLSIの微細加工レベルがナノクラスに達した現在では、マスクなどの初期製造コストが飛躍的に増加し、年間数千―数万個程度の生産規模であれば、ASICとPLDの価格差は大きく縮小。生産数量の比較的小さい通信機器や産業機器といった分野を中心に、PLDの量産使用が拡大してきた。

さらに、通信や映像などの分野では各種規格が次々と登場する中でPLDは、フレキシブルに対応できるという点もある。ASIC/ASSPであれば、新たな規格への対応は、デバイスを作り直す必要があるが、PLDはロジックの書き換えだけで対応が可能。製品販売後にも、新規格への対応が行える。規格対応だけでなく、新機能追加なども行え、電子機器メーカーの付加価値向上にも貢献する。また、ロジック規模の拡大で、発生リスクが高まっている不具合に対してもPLDであれば、市場投入後の対策も比較的容易に行え、膨大なコスト発生も起こりうる不具合によるリスクを軽減するといった観点からもPLDの割安感は増している。

さらに、昨今では、ロジックLSIの微細化を上回るペースで、FPGAの微細化が進んでいることで、より生産数量の多いケースでも、ASICとPLDの価格差は解消されつつある。

11年からは、最先端の28ナノプロセスを使用したFPGAが発売された。ASICの主流プロセスである65―40ナノクラスよりも先端のプロセスであり、さらに価格差が縮まるだけでなく、性能や消費電力面で優位性を発揮できつつある。28ナノ世代FPGAでは、28Gbpsという90−65ナノ世代プロセスASICでは実現が難しかった高速トランシーバを実現している。さらに13年には20―22ナノクラスプロセスを採用したPLDの発売も予定されている。

FPGAにプロセッサコア搭載
各FPGAメーカーは、より幅広い用途でPLD/FPGAが使用できるよう、積極的な技術・製品開発を展開している。その1つが、FPGAデバイスに、プロセッサコアを搭載する動きだ。28ナノの微細プロセスにより、集積度を高められるため、回路変更可能なロジックとともに、ARMコアなど汎用プロセッサを混載した製品の出荷が始まっている。従来、プロセッサデバイスとFPGAの2チップ構成だったシステムを1チップ化できる上、ロジック部とプロセッサ部を同一ダイ上で形成することによる高速接続性も発揮でき、性能面でも利点があるデバイスとして注目を集める。

また、3次元チップ積層技術によりFPGAの高集積化を加速させた製品も登場している。シリコン基板上に複数のFPGAチップを実装し、高速接続性を維持しながら、ロジック規模をさらに拡大させた技術であり、より大規模なASICもFPGAで代替できる。さらに、シリコン基板上にFPGAとともに、高速トランシーバなどのロジックLSIを実装した製品も開発が進められ、一部出荷が始まっている。FPGAと高速トランシーバを別個のダイで構成することで、ノイズ影響を抑えながら安定した高速信号伝送を行えるといった付加価値を実現している。

今後もFPGAは、さらなる微細プロセスの適用に加え、プロセッサやメモリー、各種汎用ロジックデバイスと複合化するなどの進化を遂げ、より高性能、多機能で使いやすいデバイスをめざしていく。