コンデンサ より高性能・小型・薄型化

 コンデンサは、成長著しい分野で新製品が相次いで開発されている。スマートフォン、タブレットPCおよびウルトラブックPCといったモバイル機器向けに小型、薄型で高性能なコンデンサの技術が高度化。一方では、太陽光発電、エコカーなど、スマートグリッドの構築を踏まえた再生可能エネルギーや環境保全をキーワードにした新しい需要分野に向けての高性能コンデンサの開発に対する取り組みも活発化してきた。これまでにない新しいマテリアル、プロセス技術を駆使している。

 スマートフォンやタブレット端末など小型、薄型、軽量で、高機能化するモバイル機器では、より小型化が要求される。また、高機能化に伴い電池の長寿命化、低消費電力化が強く求められている。対応する積層セラミックコンデンサは、0603サイズ、0402サイズといった極小チップにおける大容量化技術が進展。また、コンデンサの振動による「音鳴き」が設計課題となっており、インターポーザ基板付き積層セラミックコンデンサが新たに開発された。強誘電体セラミックの電歪効果によって交流電圧を印加すると、積層セラミックコンデンサチップに伸縮が生じる。これによって、積層方向に対して垂直な方向および平行な方向に伸縮が生じ、回路基板が面方向に振動して音として聞こえるのが「音鳴き」の現象。

 開発されたインターポーザ基板付きコンデンサは、表面実装用2端子コンデンサを接合材によってインターポーザ基板に実装した構造。これによって、コンデンサの振動の伝達を抑制し、鳴きレベルを低減できるほか、汎用の積層セラミックコンデンサと同一ランドでの実装設計が可能といった特徴がある。

 これまでの「音鳴き」対策としては、低誘電率の材料を用いることでコンデンサの歪量を低減させる商品やコンデンサの外部電極部分に金属端子を取り付けて基板への振動を低減させる技術が商品化されている。

 導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、小型、大容量で、低ESRを特徴としている。パソコンをはじめコンピュータマザーボード、ゲーム機などで採用が定着化し、ここ約10年間で年間生産数量では60億個と短い期間で市場に普及している。

 最近では、薄型機器への搭載を意識して素子収納方法をアルミケースと封口ゴムからモールド樹脂パッケージに変更することで、体積効率を改善するとともに低背化を実現した巻回型樹脂モールドタイプ導電性高分子アルミ固体電解コンデンサが開発された。

 この樹脂モールドタイプは、従来使用していたアルミケース、封口ゴム、台座が不要となることから収容性の向上が可能になる。そのため、低背化を推進でき、しかも素子寸法を大きく取れるために箔面積の増加による静電容量の拡大、ESRの低減、さらには高リプル電流対応が可能になる。

 一方、リードタイプでは、高耐電圧化への取り組みが活発化している。他のコンデンサに比べて、使用温度範囲が広く、小型で低ESR、高リプル電流という高性能な特徴を有しているが、定格電圧は35V以下での使用が一般的で、高耐圧化が課題の1つだった。ここにきて最大63Vをカバーする高耐圧化を実現した新製品が開発された。

 このほか、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサでは、厚みがわずか0.15ミリメートルの極薄チップが登場。これまでの巻回型および積層タイプにない新しい構造。積層セラミックコンデンサの大容量領域への参入が可能。

 さらに、電解質に導電性高分子と電解液の双方を複合使用した導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサが開発された。ESRは、低ESR型アルミ電解コンデンサ(125℃対応)に対して約10分の1相当の20―120mΩ、洩れ電流は従来の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの約20分の1に低減することに成功した。

パワーコンデンサの開発活発化
一方、再生可能エネルギーやEV、HEVといったエコカーの分野ではパワーコンデンサの開発が活発化している。電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタは、蓄電、エネルギー回生の用途が広がっている。キャパシタは、大量の電気を瞬時に充放電でき、繰り返し使用しても劣化が少ないのが大きな特徴。そのため、短時間で大電流の充放電を頻繁に行う用途をはじめ、電源または負荷の変動に対する対策が必要な場合、メンテナンスフリーを条件とする場合、環境に優しい素材を条件とする用途、蓄電媒体の安全性を重視する分野に適している。

具体的には立ち上がり時間を短縮するために複合機に採用されているのをはじめ、UPSでは鉛蓄電池に代わって、環境を配慮する形で搭載が始まった。また、建機は油圧からモーター駆動へとなり、ハイブリッド建機の登場でキャパシタが利用されている。さらに太陽光発電からの変換した電気エネルギーを蓄電し、夜間に点灯するLED街路灯への応用も始まった。これらに加え、今後エコカーでの搭載が期待されている。減速エネルギー回生システムや、アイドリングストップ向けなどでの採用が始まる。