半導体技術、次世代に照準
スマホなど一層の高機能化に対応、省エネ・節電に向けた電源関連など
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 社会のスマート化が進む中、半導体デバイス技術はさらなる進化を遂げている。人々の暮らしや社会をより豊かで安全なものにするため、また地球環境に優しい社会を実現するため、様々な機器の省エネ化、高機能化、高性能化などにおいて、半導体デバイスの進化が必要不可欠となっている。豊かな社会を実現するためのスマートフォンに代表されるモバイル機器の半導体技術、安全で快適な生活に欠かせない次世代自動車用半導体、さらに省エネ、節電に向けたエネルギー関連機器用のパワー半導体など。スマート社会の実現には、これら既存の技術以外にも、様々な未来的な技術の進化が必要とされている。

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スマホ向け、ハイエンドデバイスの製品展開加速
 世界中で需要が急増するスマートフォンに代表される各種通信機器は、社会や暮らしを豊かで快適なものにするには欠かせない機器である。特にスマートフォンに対しては、小型、省電力、高性能を実現するハイエンドデバイスの製品展開が加速している。デバイスメーカー各社は、スマートフォンをはじめとしたモバイル機器市場の進化に照準を合わせた独自性のある新製品・新技術開発を強化している。

 スマートフォンなどのモバイル機器は、端末の数量増に加え、高性能化、高機能化が新たなデバイス需要を生み出している。ディスプレイの大画面化、高精細カメラ搭載、ワンセグ受信機能、ブルートゥース内蔵などの高機能化が進む。またセンサーの搭載数も増え続けている。CMOSイメージセンサー、加速度センサー、電子コンパス用地磁気センサー、デジタル湿度センサー、照度センサーなど、多彩なセンシングデバイスが搭載される。

 機器のバッテリ駆動時間を延ばすため、電源関連デバイスの開発も進む。モバイル機器では、高効率化、高精度化とともに、部品実装スペースが厳しく制限されるため、電源システムを小型化する技術やモジュール化技術が求められる。

 車載用半導体デバイスにおいては、安全のための信頼性を確保しながら、最先端技術を導入した製品が投入されている。従来、信頼性を確保するため、産業機器や民生機器で実績のある成熟技術が使用される傾向が強かったが、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)などに代表されるように、車の電子化が急速に進展し、新しい技術を導入した製品が開発投入されている。

 マイコンは自動車1台あたりに50〜100個搭載される。様々なECU(電子制御ユニット)の頭脳としての役割を果たす。車載マイコンに要求されるニーズは「高い処理性能」「より多くの機能集積化」そして「高い安全性」である。HEV/EVでは、モーターやバッテリを制御駆動する半導体デバイスが新たに必要となる。モーターを駆動させるパワーデバイスも、大容量化、高効率化が求められ、従来のシリコンに代わる炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などの材料の進化に大きな期待が集まっている。

 車載情報系に搭載される半導体にも新たな変化が始まっている。画像認識システムの画像処理LSIやナビゲーションLSIなどの車載系のみならず、インフラやインターネット網との通信技術に関連した半導体製品に注目が集まる。

モジュール型の電源IC製品化
電源向けIC/パワー半導体も地球環境負荷低減へのニーズが高まる中で、技術開発が加速している。半導体・デバイスに電力供給する電源ICでは、電力変換効率の向上、サイズの縮小、ノイズ低減などが主な技術開発項目となる。同時に電源回路の設計も難易度も増した。しかしながら、そうした課題を解決したモジュール型の電源ICの製品化など進化を続けている。

「ワイドキャップ半導体」と言われる化合物半導体は、従来のパワー半導体材料であるシリコンよりも高耐圧、高温動作、高熱伝導という特質を持ち、電力変換を行うパワー半導体に適用することで多くのメリットをもたらす。太陽光や風力発電のパワーコンディショナ、電気自動車や鉄道、産業機器のモーター制御などのインバータ回路に用いることで、システムの小型化、電力変換効率の向上に貢献する。

今回のハイテクノロジーでは、これからのスマート社会に欠かせない半導体の最新技術、各社の新製品などを紹介し、これからの技術動向を俯瞰する。