高周波部品 より小型・低背・高性能化
特性に優れた材料を使い、最新プロセス技術を駆使

 スマホやタブレット、さらには高周波モジュールなどに使用される高周波部品は、小型、低背化に向けた新製品開発が活発化している。引き続き、性能、特性に優れた新しい材料を使い、最新のプロセス技術を駆使して、無線通信分野における高周波部品の技術が進化していく。

 スマホなどでは、RF(高周波)回路のほか、GPS、ブルートゥース、無線LAN、テレビチューナなどの各種モジュールを含めて、高周波部品の市場が拡大している。高周波回路で使用する電子部品には、高周波特性に優れ、高密度実装化に対応して小型、低背化を求める。

 高周波回路に使用されるコンデンサ、インダクタは、0402サイズ、0603サイズへと極小チップ化しているが、引き続き両サイズでの高Q化をはじめ、静電容量やインダクタンスの拡大などに向けた新製品開発が活発化している。

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高周波インダクタは高Qと小型化を両立
(村田製作所)

 Qは、任意の周波数における誘導性リアクタンスと抵抗の比率を表し、その効率性を数値化したもの。Qの値が高いほど、損失が少ない理想的なインダクタとしての特性を持つ。

 村田製作所は、Hi―Q高周波インダクタとして0402サイズでのラインアップを拡充したほか、0603サイズで世界最高のQ特性を実現したフィルムタイプの超Hi―Q高周波インダクタ「LQP03HQシリーズ」を開発した。同社従来品に比べて周波数2.4GHzで、Q特性を約60%向上。Q特性が高いといわれる巻線タイプと同等以上の性能を発揮する。


業界最高水準のQ 特性達成

 TDKは、業界最高水準のQ特性を達成した0402サイズの高周波積層インダクタ「MHQ0402Pシリーズ」を開発した。同社がこれまで販売してきた0603サイズの「MHQ―Pシリーズ」に比べて、体積で70%、実装面積で53%小型化し、省スペース化した。

 また、1GHzのQ特性20(インダクタンス0.2nHの場合)を実現し、高周波インダクタの既存製品「MLGシリーズ」の0402サイズ品に比べて30%強高めた。

 独自の誘電体材料を採用したのに加え、内部電極パターンの厚みを従来製品に比べて数十%肉厚化して抵抗成分を低減。

 太陽誘電は、0402サイズ高周波積層High−Qチップインダクタ「HKQ0402」に3アイテムを追加し、同形状のインダクタンス値ラインアップを世界最高の47nHまで拡充した。

 ファインライン形成技術や磁気回路シミュレーション技術、積層技術などを高度化し、最適なパターン形成を実現することで0402サイズという超小型形状において、世界最高のインダクタンス値を実現。

 これまで0.5nHから27nHまでだった「HKQ0402」に3アイテムを加え、47nHまでラインアップを拡大。「HKQ0402」全体で全53アイテムという豊富なラインアップを揃え、0603サイズからの置き換え提案を加速させる。

 水晶デバイス関連では、水晶振動子は2×1.6ミリメートルサイズ、1612サイズ、1210サイズへと小型化技術が進展。TCXO(温度補償型水晶発振器)も2520サイズから2016サイズへと小型化。

 日本電波工業は、携帯端末用統合チップセット向けに、温度センサー付き水晶振動子を開発。2016サイズで高さが0.8ミリメートルと小型、低背を実現。周波数温度特性は±12ppm.(−30―プラス85℃)。周波数帯は19.2M―26MHzに対応する。

 さらに温度補償水晶発振器(TCXO)では1612サイズで厚み0.6ミリの超小型品を開発。1.8Vの低電圧対応、1.5mAの低消費電流を同時に実現している。

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1005サイズヘと小型化した積層ダイプレクサ
(TDK)

 ダイプレクサでは、TDKが積層タイプにおいて、W―LANの2.4GHz帯、5GHz帯に対応した業界最小の1005サイズを実現した「DPXシリーズ」を開発した。

 ダイプレクサは、アンテナの入出力部に使用され、2つの周波数帯域を振り分けたり混合したりする電子部品。

 新製品は、キャパシタとインダクタとの誘電率の異なる異材質の層を組合わせて同時焼成するLTCC(低温焼成セラミック基板)技術を適用。さらにセラミック材料の薄層化および導電体の微細ライン化により、これまで最小だった1608サイズから体積を61%削減した。