静電気/サージ保護用部品 進む小型・高性能化
特性に優れた材料を使い、最新プロセス技術を駆使

 電子機器の小型軽量化、高機能化、高周波化に伴いESD(静電気放電)や雷、誘導性負荷からくるサージ過電圧、過電流による破壊や誤動作を防止するための対策がますます重要になっている。

 スマホ、タブレットPCなどに代表される小型携帯機器では、人体から放電される静電気の対策が強く求められている。微細プロセスによるLSIの採用も従来以上のESD耐性が求められる要因となっている。電子化が進む自動車でも自動車本体、車載電子機器の信号・通信ライン全般でESD対策、雷サージ、開閉サージ対策が不可欠となっている。

 雷サージ対策は従来の発電所や電力設備だけでなく、再生可能エネルギー化の進展で太陽光発電システムや風力発電システムでも直流系、交流系で雷被害保護対策の導入が進んでいる。

 こうしたESD、雷サージ、開閉サージの市場動向から電気・電子機器を保護するESD保護デバイス、サージ保護デバイス(SPD)および周辺デバイスの需要は増加。技術開発が一段と加速している。

 ESD保護用デバイスはESD電流を逃がし電圧を抑える効果を有し、周辺デバイスはESD電流、電圧を抑える機能を備えている。SPDは電源入力部、信号入出力部で使用し、落雷で誘導された異常電圧(雷サージ)から各種電子機器を保護。誘導性負荷の断続で発生する逆起電力(開閉サージ)から各種電子機器、開閉接点を保護する。

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ESD対策部品トータルソリューション(パナソニックAIS社)
 ESD保護デバイスは周波数帯に応じバリスタ、ツェナーダイオード、サプレッサなどを使用。周辺デバイスとして耐サージ抵抗やコモンモードノイズフィルターなどを用いる。バリスタはスマホ、タブレットPCなどの小型携帯機器やTVなどのAV機器にESD対策用として幅広く使われている。

 カーナビゲーション、キーレスエントリからヘッドライト、バックモニターカメラ、電動シート、ボディーECU、CAN・LINのLAN通信ラインまで車載機器、自動車の信号ライン全般へと採用が広がっている。市場の小型薄型化の要望に応えチップ型、多連型の需要が多い。チップ型では1005サイズ、0603サイズの需要が増加。特に0603サイズの伸びが顕著になっている。

 ESDサプレッサも小型化が進展。1005サイズ、0603サイズで15kVの高いESD耐量、高電圧回路でも使用できる30Vの定格電圧、0.05pFの低静電容量を実現。高速伝送回路、RF回路のESD対策に採用が増えている。1608サイズも15kVのESD耐量、50V定格電圧、0.1pF、−55〜プラス125℃の広使用温度範囲保証から車載アンテナ、高速伝送ラインやECUの入出力端子から印加されるESD流入防止用に使われている。超小型化に対応した0402サイズの開発が進んでいる。HDMIなどの高速差動ライン2ペア分のESD対策を1チップで実現した2012サイズ(定格電圧15V、定格電流100mA、静電容量0.250.05/0.10pF)も登場。

 SPDには金属酸化物バリスタ(MOV)、アバランシェブレークダイオード、サージ防護サイリスタなどの半導体素子、ガス入り放電管がある。電源用、通信・信号用に使用し、直撃雷、誘導雷の異常電圧から各種電子機器を保護する。


 エネルギーや照明分野でも需要拡大

 酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする酸化亜鉛非直線性抵抗器(ZNR)サージアブソーバはエレメントサイズ5φ〜20φ、バリスタ電圧数千V〜数十Vをラインアップ。産業、家電、通信の各分野に加え、照明、環境、エネルギーの成長分野で需要が拡大。環境では太陽光発電、風力発電の接続箱やパワコン向けに14〜20φの採用が進んでいる。エネルギーではスマートメーター、EV充電器などで14φ、LED照明には7φが使われている。バリスタ電圧数千V〜数十Vをラインアップ。発電所から一次変電所、二次変電所、配電用変電所、柱上変圧器、一般電子機器までの広範囲のサージ対策が可能になっている。

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角形チップヒューズ(パナソニックAIS社)
 異常電流が流れるとヒューズが溶断して回路を遮断するチップヒューズもスマホ、DSC、ノートPCのほか、ドライブ・SDカードなどのPC周辺機器で採用されている。角形チップヒューズでは3216サイズ、1608サイズに1005サイズが加わり、定格電流5Aまで対応している。