自動車用半導体 進む高性能化、活発な技術開発

  車内の利便性や快適性向上、先進運転支援範など安全性をサポート

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カーナビ半導体ブロック図(ローム)

 近年、自動車を取り巻く環境は大きく変化している。世界的に環境や安全への意識が高まっているだけでなく、情報や通信技術を活用した車内空間の利便性や快適性を求めるニーズも高まっている。

 環境面ではハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)などモーター駆動方式の利用拡大や、電子制御の進化による内燃機関のさらなる改善、安全面ではパッシブセーフティから運転支援システム、さらに自動運転へと向かう運転支援・制御技術の進化、また情報化の面では車内における情報アクセスの快適性の向上、などを加速させる技術が求められており、車載用半導体の需要は急増している。

 【環境を配慮した取り組みに力】

 環境問題への取り組みは自動車分野においても緊急の課題である。環境に優しく省エネ性能に優れたHEVやEVが着実に広がっている。

 家庭用電源を通じて充電ができるPHEVが市場投入され、究極のエコカーと言われる燃料電池車(FCV)も今年末に発売を開始する予定。環境に配慮したエコカーへの注目度が高まるとともに、省エネ性能向上を目指した開発も加速される。HEVやEVは基本的に駆動モーターと発電機、インバータ、二次電池、DC―DCコンバータから構成される。これらの電源部分には多くの半導体が使用されており、様々な制御により高効率化を実現する。

 EVで重要となる電池残量の計測には高精度のバッテリ監視ICが使用され、バッテリ・マネジメント・システムを構築している。セル内のエネルギーを均等化し、走行距離の改善につなげるほか、電池搭載の最適化を促し電池コスト、重量削減に貢献する。インバータはバッテリから供給された直流を複数の半導体を用いて交流に変換する。ユニットの小型化要求は強く、次世代半導体であるSiC(炭化ケイ素)素子を用いたインバータの開発も進んでいる。DC―DCコンバータもインバータとの一体化を見据え小型化が進んでおり、半導体素子の小型・集積化は加速している。

 【安全対応】

 自動車の高機能化において、近年目覚ましい発展を遂げているのが安全機能。最近の自動車にはドライバーや歩行者の安全を確保し、事故を未然に防ぐ様々な機能が搭載されている。これらの安全機能を実現するため、多様な半導体が使用され、電子制御により安全性を高めている。

 安全系車載ソリューションの中で、急速に成長しているのがADAS(先進運転支援システム)である。衝突事故を未然に防止するため、ミリ波レーダー(76GHz)や車載カメラと各種センサーを組み合わせた衝突防止機能や、レーダーが前方車との距離を測定し一定の車間距離を保つ機能など、幅広い安全機能でドライバーをサポートする。

 このほか、道路上の白線を車載カメラで認識して本来のレーンに誘導するレーン・キープ・アシスト(LKA)機能や横滑り防止機能(ESC)、タイヤの空気圧を常時検知するタイヤ空気圧監視システム(TPMS)など、安全性向上につながる様々な機能が搭載されている。

 これらの機能は、カメラやレーダー、各種センサーで検知・認識した情報をマイコンで制御し、クラスタパネルやカーナビのディスプレイ上に警告を出すことで運転者に危険を知らせる。

 【情報化対応】

 自動車の安全や環境性能とともに車内での情報化アクセスの快適性向上も大きなテーマ。自動車においても高解像度ディスプレイの搭載が進み、車内で映画などを楽しむケースは増えている。

 特に近年、自動車メーカーや車載機器メーカーが注力しているのがスマホとの連携。カーナビとスマホを接続することで、地域情報の取得や緊急時のコールシステムに活用するなど使い方は広がっている。

カーナビとスマホの連携にはUSB接続のほか、ブルートゥースによる無線接続も増えている。車内での無線通信のみならず将来的には、自動車が様々なモノとつながる「V2X」を見据え、車載用通信規格「IEEE802.11p」に準拠したモジュール開発も進んでいる。