EMC・ノイズ対策部品

ECUやEV/HEVモーター駆動用に採用増える

 我々の身の回りはノイズがあふれている。落雷、空間放電、磁気あらし、宇宙線、地電流などの自然ノイズからモーターやコンプレッサ、ヒートなどノイズを発生する部品が使用されている家電製品、産業機器などからの副次ノイズ、回路の電磁エネルギー漏えいノイズ、電磁波放射ノイズの人工ノイズまで、まさにノイズの海にいると言っても過言ではない。

 電子機器のデジタル化、自動車のエレクトロニクス化でノイズ障害が増加し、その対策が大きくな課題となっている。ノイズを出しにくい電子機器、ノイズの影響を受けにくい電子機器、自らのノイズの影響を受けにくい電子機器が強く求められている。

 ノイズ対策にはノイズを出さないようにするエミッション対策とノイズを受けても動作に影響が出ないようにするイミュニティ対策の2つがある。 

 各国で厳しいノイズ規制

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コモンモードノイズフィルタ<0.45×0.30、0.65×
0.50ミリメートル> 
(村田製作所)          
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超小型コモンモードチョークコイル<0.65×0.50
ミリメートル> (村田製作所)            


 日本ではVCCI、アメリカではFCC、ヨーロッパではCENELEC EN、カナダはCSAといったように各国で厳しいノイズ規制が実施され、規制をクリアできない機器は販売、使用できない。

 デジタル機器ではデジタルノイズ、電源ノイズの対策が必須で、電線を通じて伝わる導体伝導の伝導ノイズ、電波となって空間を飛来する空間伝導による放射ノイズの両方の対策が欠かせない。導体伝導はノイズ発生源(加害側)とノイズを受ける側(被害側)ともノイズ除去フィルタを使い、空間伝導はともにシールドを使用。導体から空間伝導は加害側がノイズ除去フィルタ、被害側はシールド、空間から導体伝導は加害側がシールド、被害側はノイズ除去フィルタを使う方法などがある。

 このため電子部品メーカー、半導体メーカー各社からノイズ対策用のノイズ除去フィルタ、チョークコイルやマイコンなどの半導体が相次いで開発、製品化されている。

 村田製作所は特定周波数のコモンモードノイズを除去するコモンモードノイズフィルタで、ウエアラブル機器をはじめとした小型携帯機器における高速差動伝送ラインにおける特定周波数のコモンモードノイズ対策で中帯域幅品、狭帯域幅品を0.65×0.50ミリメートル、0.45×0.30ミリメートルでラインアップした。チョークコイルでもウエアラブル機器をはじめとした小型携帯機器における高速差動伝送ラインのコモンモードノイズ対策で0.65×0.50ミリメートルの超小型コモンモードチョークコイルを高カットオフ周波数用途に供給している。

 半導体も高ノイズ耐性

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ノイズ/高温環境に強い家電・産業機器向け16ビット
ローパワーマイコン (ラピス)               

 半導体でもロームグループのラピスセミコンダクタがノイズに強く、動作温度を−40−105℃に広げた16ビット汎用ローパワーマイコンを「タフマイコン」と名付けて製品化した。同社得意の低消費電力設計に加え、高ノイズ耐性を確保するためキャパシタ内蔵、配線の低抵抗値化を強化し、電源ノイズ耐性を高めた。国際規格「IEC61000―4―2」のノイズテストで最高レベルを達成。マイコン自体がノイズに強いため、余分なノイズ対策を不要にした。4chの16ビットPWM出力によりパワー半導体IGBTを制御できるため、大電力を必要とする炊飯器やホームベーカリ、IHヒーターなどにも使える。静電気放電(ESD)ノイズテストのIEC規格最高レベル4(試験電圧±8kV)を超える±30kVの電圧ノイズに耐えられる。掃除機、洗濯機のモーターやIH調理器のIHから発生する自己ノイズや静電気、放射ノイズ、電源ノイズなどの外部ノイズへの耐性も大幅に強化。炊飯器、IH調理器のヒーターや掃除機のモーター、冷蔵庫のコンプレッサなどからの発熱、放熱にも強くノイズ、熱によるマイコン誤動作の課題を解決している。

 動作電圧を1.6Vまで低電圧化してニッケル水素充電池の能力を余すことなく使用できるようにした。

 近年、センサーや電源、電池が小型化され、さまざまな使用条件に耐えうる小型、低コスト、多機能のモジュールが要望されている。通信機能の汎用化や多様化などとともに、ノイズや発熱などの厳しい環境下でも使用できることが電子部品、半導体に強く求められ、それらのニーズに応える開発が加速している。