半導体進む技術革新

データの高速伝送や高速処理に対応、自動運転実用化など見据える

 エレクトロニクス技術の高度化により、人々の暮らしは安心、安全でより快適になっている。その技術進展を支えているのが半導体だ。スマホは大容量のデータを高速で伝送できるようになり、自動車はセンシング技術や通信技術の進展により自動運転を実現する。IoT(モノのインターネット)技術の進展やAI(人工知能)の発達により、産業機器や医療分野でもさらなる技術革新が続くと見られる。これらの技術進展を支える半導体の技術開発も年々加速している。最新半導体の生産プロセスにおける微細化は16−14nmなど10nm台に突入。また、貫通電極(TSV)技術を駆使しチップ同士を重ね合わせる3DIC、トランジスタを縦方向に形成する3次元メモリーといった新たな半導体プロセス技術が登場している。

 モバイル機器や自動車、産業機器、ICT技術を活用したクラウドサービスなどスマート社会を支えるアプリケーションが広がる中、半導体技術はより広範な領域に標準を合わせ、高度化を加速させる。

【データセンター向け半導体開発動向】

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 半導体メーカー各社は持続的な成長を支える重点分野として、自動車、産業機器、情報通信機器(データセンターやIoTを含む)、省エネ/新エネルギー、医療/ヘルスケアなどを挙げる。各社とも自社の強みを生かしながら、各分野に向けた技術開発を強化している。

 スマホの普及により膨大なデータの高速伝送が求められており、そのデータを蓄積するデータセンターやネットワーク制御機器の需要が高まっている。特にビッグデータ時代において要となるデータセンターは、膨大なデータを高速で処理する技術やストレージ技術などの面で、高度な技術が求められる。これらの分野における技術開発競争は激しさを増している。

 データセンターでの高速データ処理を担うFPGAにおいては、昨年インテルがFPGA大手アルテラを買収。

 昨年末に買収を完了し、16年からアルテラはインテルに新設されたプログラマブル・ソリューション事業本部に移管され、インテルのデータセンター事業本部やIoT事業本部と緊密に連携していく。今後、高成長を続けるデータセンターやIoT市場向けに新たな製品投入が期待される。

 これに対しアルテラとFPGA市場において双璧をなすザイリンクスは昨年末、IBMとデータセンター開発における戦略的提携を発表した。この提携により、高性能でエネルギー効率の高いデータセンター開発を目指す。IBMとザイリンクスはオープンなアクセラレーションインストラクチャ、ソフトウエアおよびミドルウエアを共同で開発し、機械学習やネットワーク仮想化技術(NFV)、ビッグデータ解析など新たなアプリケーション開発にも対応していく構えだ。

 このように成長分野における技術開発を強化するため、戦略的な買収や業務提携が今後も続くと予想される。

【自動車用半導体開発動向】

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自動運転時代の車載コンピューティング・プラ
ットフォームとして利用できるルネサスのSoC
「R―Car H3」                  
 半導体メーカー各社が最重点分野として注力するのが自動車分野。将来の自動運転実用化を見据え、技術開発が本格化している。自動車メーカーは既に衝突防止や車線維持支援などのADAS(先進運転支援システム)を自動車に搭載しており、自動運転技術へと進化していく見込みだ。それらの先進技術を実現するため、半導体の自動車への搭載も年々増えている。

 様々な機能を持つADASの中でも、技術開発が盛んなのが安全系技術。衝突防止のためのミリ波レーダーや物体検知のための車載カメラなどの搭載が進んでいる。ミリ波は周波数が30―300GHz程度の電波で、現在ミリ波レーダーとしては主に76GHz帯を使用している。ミリ波レーダーユニットには複数の半導体チップを実装し、検出した情報を制御する。

 2020年の東京五輪開催に向け、政府も自動運転の実用化を目指しておりインフラも含めた整備が加速する。半導体メーカー各社もこの動きを好機と捉え、技術開発に力を入れる。