車載用パワーインダクタ 各社が高温度対応強化

150度の新製品開発活発

 150度対応の車載用パワーインダクタの新製品開発が活発化している。電装化率の高まりで各種ECUの搭載点数が増加し、需要が伸びている。そのため、インダクタメーカーでは、自動車特有の技術的な要求である高温度対応を強化した新製品を相次いで市場に投入。ADAS関連向けのパワーインダクタの需要が本格的に立ち上がるなど、引き続き需要が伸びることから150度対応での小型、低背化、さらには大電流対応などに向けた新製品開発への取り組みが強まる見通し。

小型、低背化、大電流対応を推進

 自動車は電装化率の高まりで、エンジンECUをはじめ、EPS、SRSエアバッグ、ABS、HID/LEDヘッドランプなどECUの搭載点数が増加している。この動きに伴いECUの電源回路に用いられるパワーインダクタの需要は伸びている。

 車載用パワーインダクタに求められるのは、自動車の信頼性試験・AEC―Q200に準拠していること。特に自動車特有の必須条件である高温度対応、耐衝撃および耐振動対応などを満足する必要がある。高温度対応では従来、125度対応での開発が一般的だったが、150度対応での新製品開発が活発化してきた。

画像1
車載向けに150度対応のパワーインダクタの
開発が活発化(TDKの薄膜パワーインダクタ)
 TDKは業界で初めて車載向けの薄膜パワーインダクタ「TFM201610ALMAシリーズ」を開発した。HDD用ヘッドの角膜プロセス、受動部品で培ってきた材料プロセスを融合。独自の薄膜パターンニング技術と耐熱性の高い材料を使用し、製品設計を最適化。車載用途で強く求められる高温環境下での使用で高信頼性を実現し、自動車の信頼性試験・AEC―Q200に準拠して、最高150度の動作温度を保証。

 しかも従来の車載用のフェライト系巻線パワーインダクタに比べてサイズを36%減の2016サイズに小型化。フェライトに代わって金属磁性材料を使用したことによって、安定した重畳特性が得られ、直流抵抗を29%低減、定格電流は1.9倍への大電流化した。

 スミダコーポレーションは新たに小型、大電流パワーインダクタ「CDEP15D90/T150」を開発した。LEDヘッドライトはADB(配光可変)やAFS(適用性のある前照灯システム)の搭載により使用される電流が一段と大きくなっていることに対応。コアと線材の絶縁耐圧がDC120V保証できる構造になっている。絶縁耐圧が高いことで信頼性を向上させた。サイズは、大電流対応を16ミリ角×10ミリの小型、薄型で実現。

 同社は車載用パワーインダクタとして、フェライト系、メタル系の150度対応パワーインダクタシリーズを拡充している。

 NECトーキンは150度対応のメタル系、フェライト系の車載用パワーインダクタの品ぞろえを拡充している。メタル系パワーインダクタ「MPLCVシリーズ」は、金属ダスト粉末を使用することによって、高飽和磁束特性に加え、モールド構造を採用することで、巻線占有率向上による低直流抵抗化、低うなり化を実現している。一方、フェライト系の「DPCVシリーズ」は、閉磁路構造を採用し、大電流対応、低直流抵抗を実現している。

 サガミエレクは新たに150度対応の小型、大電流対応パワーインダクタ「CBH1053HA」を開発。平角ワイヤを採用することによって、10ミリ角×5.7ミリサイズという小型、低背化を実現した。閉磁路構造で電流特性を大幅に向上させ、大電流仕様の設計。直流抵抗は、2・3m―28mΩの低抵抗を実現している。さらに車載特有の要求に応えるために3端子構造によって、耐振動性、耐衝撃性を向上した。