EnOceanアライアンス

エネルギーハーベストを利用した超低消費電力ワイヤレス無線通信規格「ORCA」、日中欧で商用化へ

 エネルギーハーベストを利用した超低消費電力ワイヤレス無線通信規格「EnOcean(エンオーシャン)」の推進団体EnOceanアライアンスは、長距離無線通信を実現したEnOcean「ORCA(オルカ)」の商用化を日本、中国、欧州の3地域で重点的に進める。

 925MHzを使用。モノポールアンテナ使用時で通信距離3─4キロメートル、フラットケーブル使用時6─8キロメートルのORCAの世界初の商用化を、EnOceanアライアンスの加入企業であるNTT東日本が日本の果樹園の降霜対策用長距離無線通信センサーシステムeセンシング≠フ販売、運用を17年から開始する。

 EnOceanアライアンスのメンバー、サイミックス(長野県茅野市)が湿度/照度/土中温度/土中水分の4センサーで検出したデータの送受信機を供給。EnOceanアライアンスの主幹メンバーのプロモータであるロームも今夏、ORCA用無線通信ICのサンプル出荷を開始し、ORCAの日本、欧州、中国での普及を推進する。

【ロームでイベント】

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ローム本社で行われた
EnOceanアライアンス日本イベントに
40社約80人が出席した

 14日にはローム本社(京都市)でEnOceanアライアンス日本イベントを開催。アルプス電気、村田製作所、オムロン、太陽誘電、スター精密、日本写真印刷、オプテックス、ルネサスイーストン、福西電機、内田洋行、ワーゴジャパンのほかLIXIL、ソフトバンク、東レ、ウシオライティングなど、アライアンスメンバー40社約80人が出席。

 自社で開発したORCAを採用した長距離無線通信センサーシステムの紹介や展示デモを行った。928MHzを使い、通信距離50─100メートルの既存の近距離無線通信EnOcean「ドルフィン」を用いた介護施設の見守りシステム、ビルオートメーションシステム、学校環境システム、防犯システム、光の入らない倉庫管理システム、家具・建具IoTシステム、工場生産ライン管理システム、FA向け設備予知保全システムなども紹介された。

【日本と中国に最重点】

 EnOceanアライアンスのグラマム・マーチン会長兼CEOは「08年4月に、自社製品にEnOceanのエネルギーハーベスト技術を取り込むことを目的に設立したEnOceanアライアンスには現在、世界で400社が加盟し、そのうち40社は日本企業だ。年間5%から10%ずつ加入メンバーが増えている。加入企業の半分は欧州企業だが、革新的企業であるロームやNTT東日本に加盟してもらってからは電源不要、配線不要、メンテナンス不要のEnOceanの日本での普及が加速している。長距離無線通信技術のORCAでも4年前からNTT、ロームの協力を得てフィールドテストを行い、日本を皮切りにORCAの商用化を始める。これまでのビルオートメーションだけではなく、農業、スマートシティ、工場オートメーション、橋などの構造体のモニタリングなど用途を広げ、EnOceanの普及を図る。特に、日本と中国は最重点市場として力を入れていく」と話している。

 12年から同アライアンスのプロモータに就任してEnOceanの普及、啓発に注力。センサー、センサーモジュール、無線通信ICの開発、販売にも力を入れるロームの上林忠史産機戦略部長も「IoTといわれ始めた2年前ぐらいからEnOceanの評価が高まり、実証実験に使うセンサー、モジュール、ICがすぐに欲しいというユーザーが増えた。当社だけでは対応し切れないほどの評価案件をいただいており、着実に導入実例が増えてくると思う」と述べている。