世界最大の放送機器展「NABショー」リポート

画像1
来場者でにぎわうNAB会場

 世界最大の放送機器展「NABショー」(主催=全米放送事業者協会〈NAB〉)が4月24日から27日まで米ラスベガスで開かれた。今年は世界166カ国から1800社が出展し、10万人以上の来場者でにぎわった。

 今年はメディア、エンターテインメント、テクノロジーの融合を打ち出し、頭文字の「The M.E.T.Effect」をテーマに掲げた。様々な最新テクノロジーの融合で価値を最大化することをメッセージとして前面に出した。

画像1
VRを用いた臨場感あふれる
コンテンツ視聴が体験できる
 NABのゴードン・スミス会長は基調講演で「複合現実(MR)から自動運転車、そして映画の未来に至るまで、私たちは全ての生活を豊かにするメディア、エンターテインメント、テクノロジーの融合を目の当たりにしている。放送業界を取り巻く環境が絶え間なく変化し続けている中で、放送事業者らはあらゆるパートナーと一緒に消費者がいつでもどこでも求めるコンテンツを提供している」と語った。

 今回は4K/8K、HDRなどの高画質化技術に加え、次世代デジタル放送規格「ATSC3.0」、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、IP/12G―SDI、クラウドなど、最新技術による製品やシステムが披露された。

 米国では現在、インターネット環境での映像配信ができる次世代デジタル放送規格「ATSC3.0」の実用化に取り組む動きが活発化しており、「ATSC3.0」での新しいビジネスの創出が期待されている。

画像1
実用化への取り組みが活発化している
次世代デジタル放送規格
「ATSC3.0」

【IP関連製品も展示】

 4K/8K時代を見据えた映像伝送技術も披露された。現在の同軸ケーブルによるSDI(シリアル・デジタル・インターフェイス)は、信頼性は高いが4K/8Kを伝送するには限界があるため、1本のケーブル内に複数の映像信号が伝送できるIP伝送の採用を検討する動きが活発化している。今年もIP関連の製品やシステムなど各社から数多く展示された。

 昨年から本格化したHDRへの関心も引き続き高い。日本では4KとHDRがセットになり、カメラからテレビまで4K/HDR対応製品が充実。4K/HDR映像制作の広がりを見せている。その一方で、米国は4K/8KのHDR映像制作よりもHDR技術に特化した開発が進み、ライブ映像でのHD/HDR関連ソリューションが注目されていた。

 米国市場の需要にいち早く対応したソニーは、会場でライブHDRコンテンツを広げるHD映像制作に対応するHD/HDR映像制作ソリューションを提案した。ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ社の喜多幹夫メディアセグメント事業部門長は「米国放送市場のニーズに合わせ、4K対応機器でHD/HDR映像を表現できるソリューションを新たに導入した」と話す。

 今年は放送業界もAI(人工知能)やIoTなどのデジタル技術の活用が話題になった。特に日系放送機器メーカーはハードとソフトを融合させたソリューションに注力。高精細映像の配信を効果的に行うための付加価値の高いソリューション提案に関心が集まった。

   ◇   ◇   

 その他の日系企業の取り組みを日刊電波新聞でご紹介しております。
(呉賢h前特派員)