東レ

世界最高の熱伝導率を実現したPETフィルムを開発

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開発品(右)は空隙率が低いため透明性が高い
 東レはこのほど、従来のPET(ポリエチレン・テレフタレート)フィルムの絶縁性や加工性などの特性を保持しつつ、従来品に比べ約2.5倍となる世界最高の熱伝導率を持つPETフィルムを開発した。
 パイロット設備での技術確立を完了。19年からサンプル供給を開始。22年頃に売上高10億円の事業を目指す。

 近年、エネルギー利用効率の向上を目指し、産業機器での高出力化、安全性向上、生産性向上などのため、発生する熱を効率良く制御することが求められている。

 その熱対策として、熱伝導性の高い放熱シートや金属などが用いられるが、絶縁性能が低く漏電防止のための機能が不十分だった。そのため絶縁材料の複合化や内部に組み込んで使用するなど、範囲が限られる場合が多かった。一方、絶縁性、加工性からPETフィルムを使用する場合、既存品では熱伝導性が低く、対応が取れないため、導電部周辺での発熱による温度上昇を抑え、局所発熱を緩和するPETフィルムの開発が期待されていた。

 PETフィルムの熱伝導性を向上するには、絶縁性とともに高い熱伝導性を持つ無機粒子を多量に含有することが一般的に用いられるが、無機粒子とPETが接する界面の密着力が低く、製造工程での縦・横同時(2軸)延伸時に剥離が生じ、熱伝導性を下げる空隙(ボイド)がフィルム中に多数発生する。そのためPETフィルムでは、高伝導化は不可能と考えられていた。

 これらの課題に対し同社は、新たな粒子表面処理技術を開発。無機粒子とPET樹脂との界面接着力を向上させた。また、ナノレベルでPETの構造を制御し、2軸延伸時の応力を均一に低減することでボイドの発生を大幅に低減することに成功した。

 同社のPETフィルム「ルミラー」に、新たに熱伝導性を高めた基材フィルムとして各種産業用途で、幅広い分野の展開を進める。

 同成果は、14―16日に東京ビッグサイトで開催される「ナノテク2018」で展示・紹介する予定。