理研と東レ

衣服に直接貼り付け可能な厚さ3μm変換効率10%のウェアラブル太陽電池開発


 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員、染谷隆夫チームリーダー、同主任研究員、東レ先端材料研究所渡辺雄二研究主幹、同渡辺伸博主任研究員らは16日、100度の耐熱性と10%の高い太陽光エネルギー変換効率を兼ね備えた、厚さ3マイクロメートル超薄型有機太陽電池の開発に成功したと発表した。

 ホットメルト手法を利用して、性能劣化なく有機太陽電池を衣服に直接貼り付けることができた。この電池の実現により、将来ウエアラブルデバイスへの充電が可能となり、バッテリの消耗を気にしなくてもよくなると期待される。

 開発した電池は、ポリエステル布地にホットメルト材料を温度120度、圧力15kPa、加圧時間30秒で劣化なく貼り付けることができた。安定性評価では、80日大気保管で性能劣化は20%以下。50%の伸縮を100回以上繰り返し可能。

 有機太陽電池としての高効率と高安定性の両立は、東レが新たに開発した直線状の側鎖を分子構造に持つ半導体ポリマーと、2重封止技術による封止膜を採用、基板層は透明ポリイミドによる表面平坦性と熱安定性を向上させ、超薄型基板を実現したことによるもの。

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衣服に貼り付けた有機太陽電池と
染谷チームリーダー

 染谷チームリーダーは「今回開発した電池を衣服の肩の部分に貼り付けた場合、発電面積約100平方センチメートルとして、屋外で約1W、室内では約0.1mWが得られた。駆動できる電子機器として、ICタグが0.01mW、ラジオ1mWがある。0.1Wの携帯音楽プレヤーを動かすこともできる。充電デバイスと組み合わせることで、さらに大電力の電子機器を駆動することも可能だ」と語った。

 実用化への課題として、耐久性の向上とロー・ツー・ロールによる大面積大量生産技術の確立を挙げた。

 なお、同成果は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)、同戦略的創造研究推進事業(ERATO)による。