大阪大古賀特任助教授らの研究グル―プ

値札などの用途に最適、紙を用いた電子ペーパーを開発


 大阪大学産業科学研究所の古賀大尚特任助教、能木雅也教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明教授の研究グループは、紙を用いた電子ペーパーを開発した。

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開発した紙を用いた電子ペーパー
[引用:大阪大学産業科学研究所]

 電気的に色が変化する電子ペーパーの一種であるエレクトロクロミック(EC)を紙で実現した。紙に手書きや印刷するだけでなく、電気で情報表示することができる。試作した5センチメートル角のECペーパーディスプレイは2V0.06Aで通電すると薄青色から濃青色に変化した。折り曲げても動作する紙のようなフレキシブル性も併せ持つ。

 今回、開発した技術で従来のガラスやプラスチックベースのECを紙ベースで実現でき、材料コストも数円程度のため、まず、値札などの商品表示用などの用途を見込んでいる。数秒で表示を切り替えられることから、電子書籍も紙で実現できるとみている。

 新開発のECペーパーディスプレイは不揮発性のイオン液体電解質の1―ブチル―3―メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([Bmim]BF4)を水素結合によりセルロース繊維表面に固定化して紙の電解質を調製した。

 また、光を反射せず透過させる幅15ナノメートルのセルロースナノファイバを用いて作製した透明な紙の表面にEC機能を有する導電性高分子ポリ(3,4―エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4―スチレンスルホン酸)「PEDOT:PSS」を均質にコーティングして紙の透明EC電極を作製した。この透明EC電極2枚の間に、紙の電解質1枚を挟んで端を水で濡らし乾燥させる水素結合で重ね合わせて200マイクロメートル厚のECペーパーディスプレイに仕上げた。

 染谷チームリーダーは「今回開発した電池を衣服の肩の部分に貼り付けた場合、発電面積約100平方センチメートルとして、屋外で約1W、室内では約0.1mWが得られた。駆動できる電子機器として、ICタグが0.01mW、ラジオ1mWがある。0.1Wの携帯音楽プレヤーを動かすこともできる。充電デバイスと組み合わせることで、さらに大電力の電子機器を駆動することも可能だ」と語った。

 実用化への課題として、耐久性の向上とロー・ツー・ロールによる大面積大量生産技術の確立を挙げた。

 なお、同成果は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)、同戦略的創造研究推進事業(ERATO)による。