和歌山大学

大きな段差を乗り越えられる四輪車を開発

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急な段差を登る四輪車

 段差や凹凸のある悪路でも走行できる移動車には、主にクローラ(キャタピラ)型が使用されているが、エネルギー効率が悪く、高速性も劣るなど、改良の余地が大きい。今回開発の技術によれば、車輪直径の8割を超えるような段差に対しても、4輪を接地させたまま、搭乗部の姿勢を水平に保ちながら移動ができる。

 和歌山大学システム工学部システム工学科機械電子制御メジャーの中嶋秀朗教授は7月31日、科学技術振興機構(JST)東京本部で開催された「ロボティクス新技術説明会」(主催=JST)で、「移動プラットフォームの姿勢制御および段差移動制御技術」について発表した。

 従来技術では、手動車いすの前輪を段差の手前で持ち上げるような機構や、移動する本体の姿勢を回転させるなどの技術が提案されていた。

 また、自動車と同程度の大きさで構成される四輪の場合、越えられる段差は車輪直径の6割程度までに限られていた。

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高段差を移動できる四輪車
 今回開発した技術では、移動効率、高速性能が優れた車輪型でありながら、4輪を接地させたまま、かつ搭乗部の姿勢を水平に保ちながら、車輪直径の8割を超える高い段差でも移動できる。

 技術のポイントは、四輪車の移動時に、姿勢制御トルクと車輪上げトルクをそれぞれ重みづけした、分かりやすく、実用性の高いアルゴリズムを用いたことにある(特願2018−092958など出願済み)。

 これにより、凹凸がある環境での移動プラットフォームとして活用できる。各種サービスロボットの移動台車部、電動車いす、移動支援機器などのパーソナルモビリティ、見回りロボット、運搬ロボットなど適応できる範囲が広いのが特徴だ。

 中嶋教授は「今後は、量産性、耐久性、コスト面を考えた場合、機構やアクチュエータ構成を見直す必要がある」と語った。

【ゴットフリード・ワグネル賞受賞】

 中嶋教授は研究テーマ「人の移動の自由を実現するパーソナルモビリティビーク」が評価され、17年6月にドイツ・イノベーション・アワードにおいて、デジタル化とモビリティ分野でゴットフリード・ワグネル賞を受賞した。

 内容は、人が住んでいる屋外環境で様々なサービスをするロボット(知的な機械)が望まれているが、屋外環境には平坦な路面だけでなく、段差、傾斜路面などの不整地が多くある。そのような環境を、省エネで、高速に、かつ安定的に移動できる、応用可能性の高い実用的な「不整地移動プラットフォーム」を研究開発したことが評価の対象となった。