大坂大学

唾液を用いた高精度スクリーニングにより歯周病に有効な検査方法を提案

 日本人の80%が歯周病(歯槽膿漏〈のうろう〉)にかかっているといわれる。ギネスブックにも「全世界で最も蔓延している病気は歯周病(歯槽膿漏)である」と記されている。虫歯の患者数は歯磨きの習慣化とフッ化物を含んだ歯磨き剤の普及により減っているが、歯周病は有効な公衆衛生的な取り組みが確立されていないことから、患者数は上昇中だ。

 最近では「口内の健康は全身の健康の源」といわれ、歯周病への関心が高まっている。なかでも、生活習慣病の一つである歯周病が身体に及ぼす影響として、心臓・循環器疾患や糖尿病といった他の生活習慣病に深く関わっていることが明らかになっている。

 現在、成人の約8割が歯周病にかかっているといわれている。歯周病は、歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨で構成される歯周組織が、細菌感染によって破壊される慢性炎症性疾患で、歯を失う最も大きな原因となっている。さらには、小・中学校の学校歯科健診において歯周病と判定される児童や生徒が増えているという報告もある。歯周病は、日本人の国民病≠ニまで言われ、「万病のもと」でもある。

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【スクリーニング法】

 歯周病(歯槽膿漏)も虫歯も一番効果的なのは予防といわれている。早期発見や、歯磨きや薬剤と歯科医院での予防歯科を併用することが最も好ましいとされている。

 このほど、東京都内で開催された歯科領域の新技術説明会(科学技術振興機構主催)で、大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学分野の久保庭雅恵准教授が、唾液を用いた高精度の歯周病スクリーニングを紹介した。

 久保庭氏は「歯科医院で実施される、全ての歯を対象とした歯周ポケット測定(プロービング)には、明るい照明の下、熟練した医師でも長時間を要していた。今回紹介した唾液を用いる方法により、マンパワー、コスト、精度、侵襲性、所要時間の課題の大半が解決された」と語った。

 今回紹介された方法は、歯周病の重症度を評価する指標として、歯周ポケット内の潰瘍形成面積を算出する方法を採用。精度の高い予測モデルを想定し、複数のマーカー候補物質を選定。そのプロファイルの変化で重症度を予測する。従来の歯周病組織検査は不要となった。

 考えられる用途として、久保庭氏は「一般の健康診断や市町村レベルの歯科健診に適応可能だ。1検体当たり200円程度に抑えると公衆衛生的用途に採用される可能性は大きい。今回開発した技術は世界中に恩恵を与えることもできる」と語った。

 また、「今後の目標は、歯周病の炎症度を軽度、中等度、重度に分類することと、歯磨き方法不良、かみ合わせ力、全身疾患などの原因別分類を行い、特徴づける物質を同定し、安価に定量化する技術を開発したい」と述べた。