エヌビディアなど

IoT拡大やデータ量増量でAIチップの需要が加速

 エヌビディア、インテル、グーグル、アップルなどが競ってAIチップの開発に取り組む。その背景には自動運転、ロボティクス、医療などへのIoTの広がりや5G時代を迎えて増大するデータ処理に、現行のコンピュータシステムでの対応が難しくなっていることがある。これに代わる新たなシステム向けにAIチップの需要が拡大、加速している。

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【グラフの説明】ムーアの法則に沿った微細化速度は減速し、生産設備には巨額の投資が必要となっている。
その対応として、18年頃からAIチップの生産が増加すると予測する(IHSマークイット)

 現在のAIチップの需要拡大について、調査会社IHSマークイット日本調査部の南川明部長は「現在のコンピュータに搭載されるCPUでは、処理速度の限界、消費電力の増加、冷却装置の大型化など課題の解決が難しくなっていることが背景にある」と語った。

 今まで半導体チップの微細化、高性能化に沿って、コンピュータを中心とする市場は拡大してきた。現在のCPUの課題解決に時間がかかっていることから、これらの対応策として、AIチップに期待がかけられている。

 その先鞭(せんべん)をつけたのがエヌビディアのGPU(画像処理装置)で用いられた「アクセラレータ」だ。その後はインテル、グーグル、アップルなどに加え、ベンチャー企業も多く参入している。

【 限界を迎えるノイマン型コンピュータ 】

 約70年前に開発されたノイマン型コンピュータは、中央演算部、制御部、記憶機構、入力部、出力部の五つの部分からなり、プログラム実行時には、記憶装置から演算装置へ命令やデータがレジスタを介して転送され、命令はあらかじめセットされたアドレスに沿って逐次的に実行される。
 
 この役割を担う素子や回路が金属配線でつながっているため、信号伝達速度や消費電力などは材質や形状に影響を受ける。また現在のCPUは、ギガヘルツ帯の超高速クロックで動作するため消費電力が大きく、発熱の問題もある。

【 限各社の動向 】

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GPUを16基搭載した最新鋭の
「NVIDIA DGX-2」(エヌビディア)

 エヌビディアがデータセンター向けに製品化した「NVIDIA Tesla V100」はAI、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)で、グラフィックス処理を高速化するGPU。NVIDIA Volta アーキテクチャにより、1基で最大100CPU分の役割を担う。

 NVIDIA GPUでは何百ものTensorコアが並行演算を実行するため、スループットと効率が大幅に向上する。次世代のディープラーニングを視野に入れたものと注目される。

 インテルは、FPGAにワンチップ化することでボード面積、部品点数、コストの削減性向上を実現する「Stratix 10FPGA&SoC」を提案した。14ナノbプロセスで従来品に比べて2倍のコア性能、最大70%の電力を削減する。ASICと異なりユーザー側でICロジックを変えることができ、低消費電力などを訴求。通信基地局、データセンター、放送機器、車載などへの普及を目指す。

 グーグルは、TPU(Tensor Processing Unit)というAIチップを開発。「アルファ碁」の学習処理に用いることで人間に勝利した。同時に省電力、学習スピードの速さや正確さをアピール。IoTのエッジデバイス向けにも提供している。

 アップルは、スマホなどでの顔、音声認識用にAIチップエンジンを開発。バッテリ寿命の延長、高性能化も目指す。スマホ以外の車載、ウエアラブルメガネなどにも組み込むことを検討する。