東京大学

好きな形に切って貼りつけるだけのワイヤレス充電シート

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東京大学の切り取り可能なワイヤレス充電シート
 東京大学は、ユーザーが望む形状に切って貼り付けるだけでワイヤレス充電を実現できるシートを開発した。切断されてもコイルアレイの機能をできるだけ失わないような配線形状と、隣り合うコイル間の磁気的な干渉を回避する制御を組み合わせ、切り取り可能なワイヤレス充電シートが実現した。

 提案するシステムの実証実験として、大きさ400mm角サイズのフレキシブル基板(FPC)上に重さ82gのワイヤレス充電シートを作製。同シートは、人体への影響が小さいとされる数百kHzから数MHzの磁界を用いて、コイル間で電力をやりとりしながら、最大5W程度まで電力を送ることができる。様々な形状に切り、貼り付けるだけという手軽さを生かし、置くだけでスマホを充電できる机や棚のほか、ポケットに入れるだけで電子デバイスを充電できるかばんや衣服への応用が期待される。

 今回提案する磁界共振結合方式を用いたワイヤレス充電シートは、既存の家具や衣類などの形状に合わせて切断し、貼り付けることで、ワイヤレス充電機能を持たせるシート。形状に合わせてコイルを必要な数だけ並べる方式とは異なり、あらかじめ定型で用意したコイルアレイから不要なコイルを減らす点に新規性がある。

 シートを切り取り、既存の家具や衣類に貼り付ける場合、シートの切断は外側から行われる。しかし、これまでのワイヤレス充電シートはコイルアレイをマトリックス状に配線したものが多く、切断すると縦横に接続されたコイルの一部が機能しなくなる問題があった。

 そこで、電源部が切断されないよう電源をシート中央に配置し、H木型配線を利用して中央から外側に向かって配線した。この配線により、切断後も、コイルアレイに電流が行き渡る。また、H木型配線は電源から各コイルまでの配線の長さを等しくするため、高周波回路特有の、電源から見た各コイルのインピーダンスのばらつきを抑えることができる。コイルをなるべく密に配置することで、シート上のどこに受電器を置いても給電が可能。

 一方で、コイルが密接になればなるほどコイルの磁気的な干渉が強くなり、給電効率に悪影響を及ぼす。そこで、同時にオンとなるコイル同士が距離を保つ、時分割給電を用いた。コイルアレイを互いに隣り合わないコイル同士でグループ分けし、グループごとに給電を繰り返すことで、隣り合うコイル間の磁気的な干渉を回避できる。H木型配線と時分割給電を組み合わせることにより、切り取り後のシート上でのワイヤレス充電を最大限に生かせるシステムにした。

 家具や収納ボックス、かばん・衣服などの生活用品にワイヤレス充電機能を気軽に付与することが期待できる。今後は、印刷エレクトロニクス技術を活用し、シート内の配線と素子を一括で印刷する研究に取り組んでいくとしている。