関西大学の研究グループ

人間の環境認識手法を自律移動ロボに採用

画像1
18年9月に開かれた移動体ロボットの
屋外走行実験「中之島チャレンジ」の
関西大学の自律移動ロボット

画像1
中之島チャレンジ2018で、
人が往来している公道を自動走行する
関西大学の自律移動ロボット

 関西大学の青柳誠司教授らの研究グループは、人間の環境認識能力の調査結果を基に、過去に記憶した地点の画像との照合による自己位置推定、および道領域の検出による走行を組み合わせることで、事前に正確な位置情報や距離情報がなくても自律移動ロボットのナビゲーションが可能なことを明らかにした。大阪市の協力を得て7―12月に大阪・中之島(大阪市中央区)において、プロアシスト、大阪工業大学、大阪市立大学とともに移動ロボットの自動走行技術実証実験「中之島チャレンジ」を予定。同研究グループのナビゲーション手法により、公道で自律移動ロボットのナビゲーションが可能なことを技術実証し、環境変化対応力などの向上に役立てる。

 研究グループは、人間の環境認識手法を自律移動ロボットに取り入れることで、ロボットの柔軟な自律移動が可能になると考え、人間が目的地まで移動する際、何を頼りに自己位置を把握しているかについて調査した。
 
 その結果、被験者は
▽主に視覚からの情報を用いる
▽ランドマーク、道の情報を頼りにしている
▽具体的なランドマークの情報は補助的なもので、風景といった大域的な情報を頼りにしている、という傾向があることが分かった。

 これら人間の環境認識に基づき、自己位置推定法として、過去に記憶した地点の画像との照合に大局的特徴量であるGIST特徴量を用いた。GIST特徴量は画像をn×nのブロックに分割し、各ブロックの任意の空間周波数、方向を抽出するガボールフィルタを適用することにより特徴量を抽出する。研究グループはnを4に設定し、4周波、8方向のフィルタを用いて、1枚の画像から4×4×4×8×3の1536次元の特徴ベクトルを得るようにした。

 また、ナビゲーションの事前処理として、移動ロボットを手動で、自律移動させたい経路を走行させ、通過する経路上の地点情報を取得。経路の開始地点から終了地点までの間に複数の中間地点を設け、何番目の中間地点か、および、地点の画像とGIST特徴量を情報として得た。中間地点の選択は時系列順に並んだ画像間を比較し、画像間のGIST特徴量の差と前回の地点からのオドメトリの値が一定以上であれば中間地点として保存した。

 こうして得られた中間地点を用い、移動時に取得した画像のGIST特徴量と、中間地点画像のGIST特徴量との距離を算出し、入力画像との距離が最も小さい画像を持つ中間地点を自己位置として大局的な位置を把握できるようにした。

 中間地点と逐次比較はせず、現在地点としている地点の中間地点画像から前後複数枚を比較対象に採用。分岐点でロボットが曲がる方向は、中間地点の作成時にどちらに旋回すれば良いかという情報を手動で記録した。

 また、道領域の検出には、画像中の領域の意味を抽出することができるディープラーニングを用いた領域分割手法のSegNetを利用した。自動車用のデータセットであるCamVidDatasetで学習されたものを使い、膨張収縮処理とラベリング処理でノイズを除去し、ロボットは抽出された道領域の中心を求めて走行する。

 技術実証ではロボットに取り付けたWebカメラで画像を取り込み、処理。モーターにホイールエンコーダを取り付けて中間地点を作成。ロボットを手動走行させ事前データを取得した。

 自己位置推定の精度を高める中間地点作成時に使用したデータと異なる手動走行時のデータを用いて自己位置推定、道領域検出を評価した結果、現在位置での中間地点画像から前後合計5枚を比較対象とする時系列の情報が有用であることを確認した。

 これらの研究成果を、昨年に続き中之島チャレンジで技術実証する。前回同様、中央公会堂、中之島図書館周囲の歩道の定められたコースを、人がゆっくり歩く速度の時速4km以下で移動ロボットを自動走行させる。大阪市内の公道を移動ロボットが自動走行するのは2回目となる。

 関西大学の研究チームなどは、人が往来する環境における移動ロボットの自動走行技術の開発に役立てていく。