CATV各社が既存インフラを生かしローカル5Gの事業化を検討

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 次世代通信規格5Gを企業や自治体などが自ら構築できる「ローカル5G」の実用化への取り組みが本格化する中、CATV関連業界でも事業化に向けた検討が始まった。CATV網とローカル5Gを組み合わせることで様々な地域サービスやコンテンツサービスなどを展開でき、新たなビジネス機会と捉えるところが多い。総務省などとの実証実験も始まっており、この流れはさらに加速しそうだ。

 CATVは全国の52%以上となる約3千万世帯に放送サービスやインターネット接続サービスなどを提供しており、今やなくてはならない重要な社会インフラの一つといえる。

 現在は無線利活用促進を含むネットワークやサービスなどの高度化に向けた取り組みに注力し、有線と無線の融合をはじめとするネットワークの高度化に関する技術検討を進めている。

 昨年度は、地域BWA(広帯域移動無線アクセス)導入の拡大と地域事業者が活用できる5G制度化の働きかけを強力に推進。19年度は「地域BWA帯域の利活用」「MVNO(仮想移動体通信事業者)事業におけるスマートフォンサービスの提供」「5Gへの対応」「Wi―Fi構築推進」「IoTの事業化検討」の五つを柱に具体的な施策を打つ。

 特にCATVの有線網、無線網を生かし、地域住民が住みやすい環境や様々なサービスの提供を目指す方針で、ローカル5Gのシステム構築と運用支援を今後の大きな事業機会と捉え、積極的に取り組んでいる。

 総務省は携帯電話事業者による全国サービス提供に加え、地域や産業分野の個別ニーズにキメ細かく対応するローカル5Gを導入できる制度を整備し、地域での5Gの利用促進を図るとしている。

 今回、利用が可能になるのは衛星通信業務などとの共用検討が終わった高周波数帯域28GHz帯(28.2―28.3GHz)の100MHz幅で、最大通信速度3Gbpsという超高速の無線網を自営で構築できる。  これにより、5Gを利用している地域では比較的小規模な高速無線通信環境を構築して、工場や建設現場、商業施設、学校などで活用可能な無線局免許を自ら取得できるほか、免許取得した他者のシステムも利用可能となる。

 具体的な利用イメージはスマートファクトリー、重機の遠隔操作、ライブビューイング、スタジアムソリューション、複合商業設備ネットワークなどがあり、5Gの利点を生かしつつ、場所・時間・利用者に応じた環境を手軽に実現する。高精細4K放送や超高精細8K放送の無線伝送などにも期待がかかる。

 ローカル通信のため高い安定性とセキュリティが確保できることも特徴で、柔軟なエリア展開が可能。地域課題の解決や産業の発展に役立つと見込まれる。

 ローカル5Gの普及を見据え、各地域で実証実験も始まった。6月には総務省、住友商事グループ、ジュピターテレコム(JCOM)、愛媛CATVなどが連携し、松山市で全国初となる実証実験を実施。総務省が割り当てる予定の周波数(28GHz)を使って、距離や障害物、気象状況などが無線通信に及ぼす影響を実際の市街地空間において検証した。

 実験ではCATVの既存インフラとローカル5Gシステムを組み合わせた環境での4K・8Kの超高精細映像の無線通信伝送を行い、有線と遜色ない伝送を確認できた。こうした検証を重ねながら各社は実用化に向けた開発を加速させる構えだ。