NRIが25年度見据えて「5G」関連市場予測

 野村総合研究所(NRI)が次世代高速通信規格5Gに関する五つの主要市場について、25年度を見据え予測した。大容量の映像を送信できる5Gの特徴を生かしたスポーツ分野の動画配信サービスなどが早期に立ち上がり、ヘルスケアや製造業などの関連市場も拡大すると見ている。

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 NRIでは、5G関連の国内市場を「携帯電話端末」「SporTech(スポーツ)」「HealthTech(ヘルスケア)」「ファクトリーIoT」「スマートシティプラットフォーム」に分けて予測。中でも、「高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という特徴を持つ5Gの恩恵をいち早く実感できるサービスとして、インターネットを介するスポーツ関連の動画配信に注目した。

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 20年開催の東京五輪・パラリンピックや国際サッカー連盟(FIFA)が22年に開くW杯をきっかけにスポーツ観戦への関心が高まり、動画配信サービスで25年度に800億円超の市場を形成。

 VR(仮想現実)などの最新技術で観戦の楽しみ方が広がると期待している。これにIoT活用の関連用品・サービスを加えたスポーツ市場全体は25年度に1547億円に達し、うち約11%が5G寄与分となる。

 5Gはヘルスケアや製造業への応用でも真価を発揮。健康寿命の延伸による社会保障費の抑制が求められる中、5Gは体温や脈拍などの生命状態を示す「バイタルサイン」を収集・分析してQOL(生活の質)につなげる展開も支えそうだ。ヘルスケア市場は25年度に2254億円まで増大し、うち約26%(580億円)が5G関連になると見る。

 デジタル技術で生産活動を革新するファクトリーIoT市場は25年度に1兆1019億円となり、うち約2%(207億円)が5G関連になると予測されている。範囲を限定して5Gの運用を認めるローカル5Gを追い風に、例えば、工場内の配線を全て無線化して柔軟な配置換えを実現できるようになる。

 5G対応の携帯電話端末は利用可能エリアの拡大に応じて着実に普及。25年度には端末の年間販売台数の56%(約2000万台)が5G対応になる。

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NTTドコモとコマツは東京モーターショーで、5Gを用いて建設機械を遠隔制御するデモを行った

 5Gを機に注目度が増すと見られるのが、通信事業者が協力企業を通じて最終ユーザーに高付加価値サービスを届ける事業モデル「B2B2X」。東京都内で開いた説明会で、コンサルティング事業本部の北俊一パートナーは「23年以降に5Gのポテンシャルがフルに発揮される。それまでの主戦場はB2B2Xだ」と力説した。

 デジタル時代の国際競争について、北氏は「ロボットやセンサーなど多様なデバイスから得られる良質なデータを『価値』化する第2幕に突入する」とも強調。第2幕で最初に本格化する工場のデジタル変革を巡る戦いで日本は、製造業で培った「現場力」を生かせる好機になるとの見方も示した。