地域課題解決へ大詰め

5G総合実証試験進む

 次世代高速通信規格5Gの商用化がいよいよ今春、始まる。超高速大容量、超低遅延・高信頼性、多数同時接続という特性を持つ5Gは民生用途・産業用途において様々な新サービスを創出すると期待されており、現在、様々な実証試験が行われている。5Gでは何ができるのか。特に地域課題の解決に重点を置いた総務省主導の19年度5G総合実証試験から、一部を紹介する。

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 5G総合実証試験は17年度から実施されており、初年度は実際の5G利活用分野を想定した技術検証を、事業者が実施したいテーマと場所で行った。また18年度はICTインフラ地域展開戦略検討会の「8つの課題」(労働力、地場産業、観光、教育、モビリティ、医療・介護、防災・減災、行政サービス)を意識し技術検証と性能評価を継続して実施した。

 3年目となる19年度は、これまでの技術検証の成果と、前年度に行った「5G利活用アイデアコンテスト」の結果を踏まえ、5Gによる地域課題の解決に資する利活用モデルに力点を置いた実証が、全国23カ所で行われている(表参照。19年10月時点の実施内容)。

 例えば、地場産業の課題解決に向けた取り組みとして、11月に北海道日高地方にある新冠町で行われた軽種馬育成支援を目的とした実証試験が興味深い。

 新冠町の多くの生産牧場では、競りに向け子馬を育成牧場に預けるケースが多く、生産牧場からは子馬の状況を確認したい、関東などに在住の馬主からは子馬の育成状況を遠隔地から高精細映像で観察したいというニーズがある。

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5Gを活用した軽種馬育成支援実証実験の様子

 試験では日高軽種馬共同育成公社に5Gネットワークを構築し、ドローンに搭載した8Kカメラで軽種馬のトレーニングの様子を撮影。高精細映像をリアルタイムで地上の8Kモニターに表示し、足運びまで鮮明に観察できることを確認した。また5Gエリア化した厩舎(きゅうしゃ)内に設置した8Kカメラの映像や、4Kカメラ4台の映像を合成したマルチアングル8K映像を5G伝送で8Kモニターに表示。これにより1頭の軽種馬の様子を4方向から観察し、育成状況や・健康状態の確認ができることを実証した。

 大容量超高精精細画像のリアルタイム伝送は5G最大の武器。5Gにより画像が人の「目」以上の役割を担い、遠隔地での高度治療・診療や、クレーンの安全な遠隔操作など様々なユースケースを可能にする。

 今春以降は5G利活用モデルの技術実証などが行われ、いよいよ地域課題の解決に向けいくつかのサービスが始まる予定だ。