株主総会のバーチャル化前進

新型コロナ感染防止でIT各社が相次ぎ実施

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、株主がインターネットを活用して遠隔地から参加する「バーチャル株主総会」などの導入機運が高まりつつある。

 ソフトウエア開発各社が感染拡大防止の一環で、様々なバーチャル株主総会を相次ぎ導入。3月期決算の上場企業による総会シーズンが本格化する6月を視野に、こうした総会の開催を支援するサービスの提供を目指すWeb会議システム大手も現れた。

 3月29日。サイボウズは東京都内の会場に株主を集めて開く予定だった定時株主総会を見直し、バーチャル株主総会も取り入れた。

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サイボウズがライブ配信した株主総会の1場面。青野社長が株主らの質問に答えた

 新型コロナの感染拡大を踏まえた措置で、ライブ配信の経験が緊急時に生きた。株主の安全確保のため、書面による議決権の事前行使を求めるとともにネット中継も実施。自宅でも総会の模様を視聴できるようにした。

 リアルな会場には4人の株主が来場し、2人から質問。ネット経由の質問は26問に達し、ライブ配信の視聴者数は最大で510人となった。会社側からは役員ら9人が出席し、このうち6人がPCを使って遠隔で参加した。

 同社の青野慶久社長は株主らの質問に一つ一つ回答。株主総会の今後については「今後もWebをうまく活用して開催したい」と答えた。全ての議案は原案通りに可決し、約1時間半で終了した。

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ブイキューブは3月下旬の株主総会で、
会場の様子をライブ配信した

 Web会議システム国内最大手のブイキューブも、バーチャル株主総会の有用性に目を付けた1社。既に15年3月開催の定時総会以来、ライブ配信の経験を積み上げてきた。

 その実績を土台に今年3月25日、新機能を取り入れたバーチャル株主総会を試験運用。総会の会場で撮影したカメラの映像と資料をライブ配信。株主は遠隔地にいてもPCなどで閲覧できるほか、チャット機能で質問も行えるようにした。

 今後は、ネット上で議決権行使が行える「出席型」のバーチャル株主総会を想定したサービスの開発を、弁護士や金融機関と連携して推進。総会の招集通知に記載されたQRコードにスマートフォンをかざすだけで出席できる仕組みの導入などを視野に入れる。

 25日には、来場者数を大きく上回る100人超の株主がオンラインで参加した。同社の間下直晃社長は「地方にいる株主も参加しやすくなる。オンラインで議決権行使が行えるところまでしっかり固めたい」と強調した。

 本格的な総会シーズンを控える中、オンライン開催の道を開く政府の動きも活発化。新型コロナの感染拡大を受けて経済産業省は、総会運営面で配慮する事項の考え方を整理したQ&A集を法務省とまとめ、2日に発表した。

 両省は、この中でバーチャル株主総会の活用も想定し、「会場に事実上株主が出席していなかったとしても、株主総会を開催することは可能」と明記した。

 バーチャル株主総会は、株主総会にネット経由で参加する株主の扱いが「会社法上の出席」と扱われるかどうかによって、「参加型」と「出席型」に分類される。

 富士ソフトは3月13日、ネット上で議決権を行使できる総会を開き、注目を集めた。経産省はネット上で株主総会に参加する際の指針を2月に策定しており、それに沿った同社の事例は「出席型としては初めて」(経済産業政策局)という。

 現行法では、ネット上のみで株主総会を開くことが難しい。経産省はバーチャル株主総会の活用を「選択肢の一つ」として促す方針で、総会でのIT活用を促す動きが一段と広がる可能性が高い。