中国の製造業、工場再開の動き活発化

日系製造装置各社、本格回復に向け準備

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観光地には人出が増えている(上海のバンド=外灘)
(写真提供:ジャパンユニックス)

 新型コロナウイルス感染拡大の収束は見通せないものの、中国では8日の武漢市の都市封鎖解除などから、各地で工場再開の動きが活発になりつつある。

 日系製造装置系各社は、中国の入国規制や国内の移動制限などで活動が制約されつつも、本格回復に向けて準備を進める。

 中国における新型コロナウイルスに対する先行きは油断できないが、規制が徐々に緩和されるに伴い、国内移動など人々の動きが出始め、主な観光スポットでは人出も増えた。

 製造業は春節明けから回復の動きがあり、4月以降、次第に活発化している。

 FUJIの須原信介社長は「当社顧客の生産も従来の8割程度まで戻ってきた。5Gのインフラ向け生産設備は昨年から順調に推移する一方、車載や産機向けは低迷が続いている。

 新型コロナウイルスの感染を防ぐ上でも生産の自動化や無人工場への関心は高く、当社のスマートファクトリーをさらに推進したい」と述べる。

 スマートファクトリーのプラットフォームとして「次世代」に位置付ける新コンセプトの実装機NXTRを今秋、市場に投入する。

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にぎわった昨年4月の「ネプコンチャイナ」。
装置各社は市況回復に期待をかける

 JUKIでは実装機の引き合いが、2月は厳しかったが3月から増加傾向を示す。表面実装後工程の挿入機、部品自動倉庫、基板検査機など、人手から自動化へのニーズはますます拡大し、5G関連の動きも盛んだ。

 一方で「代理店にも従業員が戻り従来通り稼働中だが、感染第2波の危険もあり、顧客訪問などでは慎重な活動を勧めている。予断は許さないが、急速な回復も見込まれるため、そのニーズに対応できるよう準備を進める」(同社)。

 パナソニックは実装機について、欧米や南アジアでは新型コロナ感染症の拡大防止策で経済活動が大幅に制限されて需要低迷の懸念が高まっているが、中国は経済活動の回復を進める政府の施策もあって市況が回復しつつある、とする。

 ジャパンユニックスの河野賢太郎常務は「中国の工場は全般的に稼働を再開したと言われているが、外出規制などで営業活動が制約されているために十分な活動ができず、この状況が長期化する懸念もある。自動車の世界市場では需要が回復するまで相当な時間を要すると見ており、設備投資に対する先行きは楽観視できない状況だ。車載については、主なOEMが工場を停止しているため、部品需要もしばらくは低迷すると思われる。設備投資需要にはリーマンショック時以上の影響が出るのでは」と厳しい見方をしている。

 ユニオンツールは、同社の主力製品であるプリント基板用ドリルの売上げのうち約70%を中国が占める。

 大平博社長は「昨年は中国での5Gインフラ整備に伴う基地局基板などで需要が伸び、全体の業績が底上げされた。今年に入って新型コロナウイルスの影響で様相は一変したが、ここにきて立ち直りつつあり、引き合いや受注が増加している。上海、東莞、台湾工場のいずれも生産が戻っている」という。

 はんだメーカーは、弘輝では、中国の経済活動が回復を見せ始めたのに伴い、3月中旬以降、スマートフォンメーカーや車載品メーカーなどの工場が再開されて段階的に需要が増加。蘇州工場は作業者不足などの問題もなく稼働し、受注は回復途上にある。

 顧客の稼働状況も回復しつつあり、第1四半期(1-3月)の都市封鎖で出荷できなかった受注は第2四半期(4-6月)に対応する。

 その結果、ソルダペーストの販売量は減少していない。同社は動き始めた中国顧客に向け、微細パターン用ソルダペーストS3X70-G811を5月初旬にリリースする予定だ。

 日本アルミットは、中国の生産拠点である上海アルミットの生産が例年の90%以上にまで回復した。

 車載、産機系顧客は生産が75-90%まで、また通信関連では大手通信系顧客で90%まで生産が回復しているが、部品などの協力メーカーの再開率が低く、生産に影響が出ている。

 同社では「中国政府は経済回復のために様々な支援措置を発表している」として、今後の回復に期待する。