通信用DC-DCコンバーターの技術

財津俊行:TDK(株)パワーシステムズ・商品企画部



◆マーケット動向/ユーザーニーズ
 ブロードバンドは図1に示すように光ネットワーク基幹網の「ロングホール系」、交換機やIPスイッチからなる局舎の部分である「バックボーン系」、それより下の階層でアクセス系との中間に位置し、IPルータやLANスイッチからなり都市間でサービスプロバイダーを結ぶ「メトロ系」、そしてADSLやFTTH、ワイヤレスLANに代表される各家庭へのブロードバンド(狭義の意味のブロードバンド)である「アクセス系」で構成されている。そして、これらの通信装置にサーバーやストレージが接続され、壮大なブロードバンドを支えるインフラストラクチャーを構成している。

図1
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ブロードバンドインフラストラクチャーの装置


◆DPA(分散給電)のトレンド
 これらの装置の給電形態は集中給電から分散給電(DPA:DistributedPowerArchitecture)へと移行してきた。そのDPAは架下のユニット電源からの給電であるDPAレベル1(これを集中給電ともいう)、シェルフ(棚)単位で給電するDPAレベル2、ボード単位で給電するDPAレベル3(いわゆるオンボード電源)、ボード内で絶縁DC−DCと非絶縁DC−DCで構成され中間バスを持つDPAレベル4へと移行している。
 図3はDPAレベル3、DPAレベル4のボード実装のイメージ図である。

図2
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  図3
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分散給電(PDA)のトレンド
ボード実装イメージ


◆DPAを支える技術
 (1)高効率回路技術
 通信用DC−DCコンバーターには高効率化が常に求められている。高効率化により、電源の電力密度のアップと装置内部の損失を減らすことにより、信頼性を向上させることができるからである。ここでは一例としてクオータブリック(100Wクラス)の回路技術を紹介する。図4に示すように、前段にレギュレーション部、後段に絶縁部を持つ2ステージコンバーター方式を採用している。
 この方式により、スイッチ部(半導体)と磁性部品の占有体積の最適化、耐圧の最適化などを行い91.5%(出力3.3V/25A)という業界トップクラスの効率を実現している。この方式は低電圧でも高効率を維持することができ、出力1.8V/25Aでも効率90.5%を達成している。
 (2)制御技術
 また、DC−DCコンバーターを装置ボードに実装した場合、DC−DCコンバーターとLSIなどの負荷との間のプリント基板のインピーダンスや、そこに付加されるコンデンサーによってDC−DCコンバーターの制御系が不安定になり、異常発振を起こすことがある。
 TDKは外部インピーダンスまで含めた制御系の安定度を事前に計算によってシミュレートすることで、安定な動作環境をサポートすることができる。図5には、系の安定解析の一例として状態平均化を用いた4次系(DC−DCが2次系、外部インピーダンスが2次系)の計算例を示す。

図4
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  図5
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2ステージコンバータートポロジー
安定度の解析


◆DPAを支えるラインアップ
 DPAを支えるDC−DCコンバーターのラインアップは絶縁型の業界標準であるブリックコンバーターと特に実装環境が厳しい用途に適した超低背型(高さ4mm品)、および非絶縁型で構成される。今回は、主に絶縁型DC−DCコンバーターのラインアップを紹介する。ブリックコンバーターはPMBシリーズ、超低背DC−DCコンバーターはCFシリーズである(写真)。
 *PMBシリーズ ブリックコンバーター
・フルブリック FAタイプ 600W
・ハーフブリック HA/HDタイプ300W
・クオータブリック
1出力 Qタイプ 100W
    Bタイプ 75W2出力 QAタイプ 75W
・マイクロブリック
SMD MBタイプ 30WDIP MAタイプ 30W
 *CFシリーズ超低背DC−DCコンバーター
CFTタイプ 30W
CFRタイプ 15W
CFPタイプ 10W
 各タイプについて、特徴を述べる。
 (1)フルブリック PMBシリーズ FAタイプ
・サイズ116.1×61.0×12.7mm
・入力:48V
・出力:28V、12Vv
・最大出力600W(業界最高水準)
・高効率 92%
・広範囲出力可変可能 60%−110%
 (2)ハーフブリック PMBシリーズ HA/HDタイプ
・サイズ 61.0×57.9×12.7mm
・入力:48V
・出力:28V、24V、12V、5V、3.3V、2.5V、1.8V、1.5V、1.2V
・広範囲出力可変可能・最大出力300W(業界最高水準)
・高効率 92%
・並列運転可能(HDシリーズのみ)
 (3)クオータブリック PMBシリーズ Qタイプ
・サイズ 57.9×36.8×12.7mm
・入力:48V
・出力:5V、3.3V、2.5V、1.8V、1.5V
・最大出力 100W(業界最高水準)
・効率 91.5%(@3.3V/25A)、90.5%(@1.8V/25A)
・2ステージコンバーター方式により低電圧でも高効率を達成
・低リップルノイズ(30mVp−p)
 PMBシリーズ QBタイプ
・サイズ 57.9×36.8×8.1mm
・入力:48V
・出力:5V、3.3V、2.5V、1.8V
・実装高8.1mmで国内標準にも適用
・最大出力75W、低コスト化に最適
・効率 90%(3.3V/10A@80度Cで自然空冷運用化)
 PMBシリーズ QAタイプ
・サイズ 58.4×38.1×12.7mm
・入力:48V
・出力:5/3.3V、3.3/1.8V
・2出力独立制御(1.0V−5.5Vの間で可変可能)
・2出力間のフレキシブルな電流配分が可能
・最大出力75
・効率 89%
 (4)マイクロブリック PMBシリーズ MA/MBタイプ
・サイズ 47.8×29.5×10.2mm
・入力:48V
・出力:5V、3.3V、2.5V
・重さ25g(自動挿入可能)
・最大出力30W(業界最高)
・表面実装タイプ(MBシリーズ)並びにDIPタイプ(MAシリーズ)
・ポジティブ/ネガティブロジックON/OFF選択可能
(5)超低背型DC−DC CFシリーズ CFTタイプ
・サイズ
 CFTタイプ:45.6×45.0×4.5mm
 CFRタイプ:40.5×31.7×4.3mm
 CFPタイプ:40.5×27.7×4.3mm
・入力:48V
・出力:3.3V、2.5V、1.8V、1.5V(CFPタイプのみ)
・効率
 CFTタイプ:91%(@3.3V)
 CFRタイプ:89%(@2.5V)
 CFPタイプ:88%(@3.3V)
・超低背:多層基板上にパタンコイルを形成することにより、高さ約4mmの超低背を実現。マザーボードの裏面にも実装可能。

写真
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PMBシリーズ、CFシリーズ


◆今後の展開
 今後はブリックコンバータをさらにハイパワー化させ、DPAレベル4の通信用VRMや非絶縁DC−DCを充実化させ、次世代ブロードバンド用のDPAソリューションを提供していく予定である。






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