チップ半固定可変抵抗器の技術動向

本間俊生:アルプス電気(株)コンポーネント事業部 第一技術部

◆市場動向
 携帯電話やデジタルカメラ、DVD−ROM、CD−R/RWを中心とした情報通信機器が市場を賑わせている。特にDVD−ROMとCD−R/RWは、パソコン用標準搭載ドライブのみではなく、民生用AV機器としても高成長を継続している。これらの市場では今後においても、小型・携帯型の記憶装置として新たなセットが生まれてくると見られ、そこに使用される部品の小型化・薄型化のニーズはますます強くなっている。
 このような市場背景から、アルプス電気としては、さまざまな回路調整機能として使われるチップ半固定可変抵抗器の小型化/薄型化に取り組み、ニーズに対応した外形2mmサイズおよび3mmサイズの製品を開発してきた。
 以下に製品の開発背景、技術上のポイントおよび今後の市場動向と課題について説明する。



◆開発背景
 半固定可変抵抗器は、デジタル化が進む中で半導体チップでは補いきれない微妙な出力調整を、抵抗値を可変させることで行っている。また、調整後の出力を安定・保持させなければならない必要性からも高信頼性が求められる。
 一般的に、可変抵抗器は導電粒子にカーボンを用いた炭素系皮膜タイプと、酸化ルテニウムを用いた金属皮膜タイプ(以下、サーメットタイプ)の2つに大別されるが、前述の情報通信機器のセットでは特に高信頼性が求められることが多く、したがって温度や湿度の影響をほとんど受けないサーメットタイプの半固定を使用するケースが多い。
 そこで当社は、サーメットタイプのチップ半固定の開発をさらに進め、精密部品加工技術および高速組立技術を追求した上で、1999年に外形3mmサイズの薄型チップ半固定(以下、3形サーメット)、2000年10月から外形2mmサイズの薄型チップ半固定(以下、2形サーメット)を順次開発、量産を開始した。
 ともに業界最薄クラスの自動調整タイプであり、この開発により、ニーズに対応した多様なバラエティの品揃えを完了させている。
 なお、顧客ニーズや市場動向を踏まえた、製品開発にあたっての技術上のポイントは次の5つと捉えた。
 (1)薄型 (2)コスト (3)ハンダ耐熱性 (4)自動調整対応 (5)回転止め機能



◆3形サーメットの特徴
 1999年から量産を開始し、好評を博している3形サーメット半固定(当社製品番号:RH03ADC)について特徴を説明する(写真1および図1を参照)。
(1)薄型化
 基材であるセラミック基板の表面および裏面に凹みを設け、各部材をその凹みに収納する構造をとることで、自動調整機能を有する薄型タイプを実現。
(2)ハンダ耐熱性の向上
 従来のNiマイナスPbSnメッキ電極に代え、金属端子をそのまま電極として使用する構造を採用することで、優れた耐熱性を確保し、かつ、鉛フリー化にともなうリフロー温度の上昇にも対応している。
(3)回転止め機能の追加
 調整作業中の出力オープンによる他電子部品の破壊防止のため、セラミック基板およびしゅう動子の形状を工夫し、従来このサイズでは困難であった回転範囲規制の機能を盛り込んだ。 また、ストッパー不要のニーズもあることから、回転止め機能付き/無の双方を製品化した。
(4)その他の主な仕様
 ・定格電力:0.2W
 ・最高使用電圧:DC50V
 ・公称全抵抗値範囲:100Ω〜2.2MΩ
 ・抵抗値許容差:±25%
 ・回転止め強度:20mN・m

写真1
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  図1
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3形サーメットRH03ADC
3形サーメットRH03ADCの外形寸法図


◆2形サーメットの特徴
 2000年10月から量産を開始し、好評を博している2形サーメット半固定(当社製品番号:RH02B1C)について特徴を説明する(写真2および図2を参照)。
(1)薄型化
 従来別部品であった調整部ツマミとしゅう動子の一体化を図り、かつセラミック基板の超薄型化を追求することで、自動調整タイプでありながら業界最薄レベルを実現。
 一般にIC、コネクターの高さはMin.1mmであり、他搭載部品への高さ要求はそれ以下になることから、製品高さ1mm以下を目標に開発した。
(2)ハンダ耐熱性の向上
 3形サーメットと同一のコンセプトで、金属端子を2形サーメットにも採用し、ハンダ耐熱性の向上を図った。
(3)ハンダ付けランドの汎用性向上
 ハンダ付けランド寸法については、業界他社との共通性を持たせている。
(4)その他の主な仕様
 ・定格電力  :0.15W
 ・最高使用電圧:DC50V
 ・公称全抵抗値範囲:100Ω〜2.2MΩ
 ・抵抗値許容差:±25%

写真2
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  図2
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2形サーメットRH02BIC
2形サーメットRH02BICの外形寸法図


◆今後の市場動向と課題
 半固定可変抵抗器は新しいセットが開発される際には使用個数が比較的多いものの、VAの目的で調整機能を半導体チップに取り込む検討が随時行われ、既存セットにおいては使用個数が減る傾向にある。
 しかし、既存セットが普及期に入る頃には次世代の新たなセットが開発され、新たに半固定を使用するというサイクルが繰り返されるため、需要としてなくなるものではない。また、これからますますAV、情報、通信の機能融合が進み、新しい規格のセットが連鎖的に開発されてくると予想され、半固定の需要は残ると予測する。
 今後の市場動向から見ると、家庭用AV機器とPCを主とした情報機器の融合がますます加速し、PC/AV/白物家電の融合といった、新たな次世代大容量記憶装置の登場や、携帯電話/PDA用などの液晶モジュールのさらなる小型・薄型化が進展すると見ている。したがって、小型・薄型のチップ半固定の需要はさらに増加する傾向にあると予測するが、従来からの小型・薄型化ニーズに加え、高信頼性と低価格対応のニーズもますます強まることから、その実現にあたっての商品開発力や生産技術力の向上は今後の重点課題といえる。






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