加速度センサーの技術・製品傾向


加速度センサーは、加速度、衝撃、傾き、振動などを検出するもので、従来1軸検出が中心であったが、近年は2軸検出、最近では3軸検出で携帯電話の方位情報誤差修正やポータブル機器のHDD(ハード・ディスク・ドライブ)落下時保護など新規分野への導入が進められている。

とくにひとつのセンサーで3次元的に検知する3軸加速度センサーの開発が盛んで、MEMS(マイクロマシン)技術を導入した超小型の3軸加速度センサーが各社から登場してきている。

MEMSは、半導体の微細加工技術を用いてメカニカル部分を微小に作成する技術で、微小化が可能なことと、シリコン基板を用いればコントロールICなど、半導体デバイスと合わせて一体で作り込むことができる。

おもにセンシングデバイスの高機能化のために導入されるようになっており、製品化されているセンサーとしては、3軸加速度センサーの他に微小フォースセンサー、圧力センサー、フローセンサーなどが製品化されている。

3軸加速度センサーは、3つの軸(X、Y、Z)の加速度を検知するもので、2軸タイプで360°検知するには2個使用する必要があったが、3軸では1個ですむ。

<最新加速度センサー>

三菱電機は、カーナビやプロジェクタなどの民生・産業機器の傾斜角・振動検出および姿勢制御システムに最適な、小型で高感度の半導体加速度センサー1軸検出タイプMAS1910Pと2軸検出タイプMAS1920Pを開発している(写真1)。


〔写真1〕三菱電機の半導体加速度センサーMAS1910PとMAS1920P

この半導体加速度センサーは、検出した加速度を静電容量に変換するチップと静電容量を電圧に変換する信号処理ASICで構成したもの。

MEMS技術によりセンサーチップを小型化するとともに、回路設計の最適化により、従来ASICの後段に必要としたローパスフィルタを省くことで、業界最高水準の加速度検出感度1000mV/gを持ちながら樹脂モールドパッケージでは業界最小実装面積の1軸検出タイプと、従来の1軸検出タイプと同等サイズの2軸検出タイプを開発した。

2軸検出タイプは、従来1軸タイプを2個必要とした水平面に対する傾斜の方向と傾斜角の検出を1個で対応可能とし機器のコスト削減と低消費電流化した。

北陸電気工業は、低消費電流タイプのMEMS技術を用いピエゾ抵抗型3軸加速度センサーHAAM-313Bをラインアップに追加した(写真2)。


〔写真2〕北陸電気工業の3軸加速度センサーHAAM-313B

このセンサーは新たにスタンバイ端子を設定したことにより、省エネ設計に貢献する。また、使用温度範囲もマイナス25℃-75℃と拡大し、幅広い分野への応用を可能にした。

動作時電流は0.7mA、スタンバイ時電流は1μAと少ない。感度は400mV/G、耐衝撃性は5000G以上、サイズは5.6×5.6mm、厚さ1.4mm。

また、3×3mmサイズで、厚さ0.9mmの世界最小ピエゾ抵抗型3軸加速度センサーHAAM-325Bを開発した。11月からサンプル出荷を開始する。

今後1インチ以下の超小型HDDの出現などでさらに小型化のニーズが高まるとして小型化した。

新製品は、0.7mAの省電力モードが選択でき、アナログ出力で付加機能として、割り込み1:落下検出端子、割り込み2:衝撃検出端子を有しているのが特徴である。感度は400mV/G、動作電圧は2.2-3.6V。

同社ではHDDの落下検知用のほか、携帯情報端末の入力デバイス(スクロール機能)、家電・映像機器の傾斜・振動モニター、携帯ゲーム機やゲーム機のモーションセンサー、セキュリティ用の傾斜・振動モニター、ロボットなどの姿勢制御など幅広い市場を開拓していく。

日立金属は、従来品と同等の機能・感度を維持しながら体積を3分の1とした3軸加速度センサーH34C(写真3)と配線が不要なワイヤレス3軸加速度センサーを開発している。


〔写真3〕日立金属の3軸加速度センサーH34C

この3軸加速度センサーは、モバイル機器向けに小型と高機能の両立に対応する製品として開発したもの。パッケージデザインやセンサーの見直しにより、従来品に対しサイズを3.4×3.4mm、厚さ0.92mmと超小型化した。

内蔵ICによる特性の補正機能付きで、補正回路を別に設ける必要がなく低消費電力となっている。また、5000Gの高対衝撃性を実現している。

小型ワイヤレス3軸加速度センサーは、直径26×8.2mmと面積は500円玉サイズ。このセンサーは用途開発を支援するためのツールとして開発されたもので、煩わしい配線作業が不要なため手軽に利用できる。

沖電気工業は、加速度センサーとセンサーコントロールICを1チップ化した5.0×5.0×厚さ1.4mmの小型3軸加速度センサーモジュールML8950(写真4)を開発している。


〔写真4〕沖電気工業の3軸加速度センサーML8950

この製品は3軸方向の加速度・傾き・衝撃などを検出、傾斜角度・振動の測定を可能にするもので、独自のマイクロマシニング技術により小型・薄型化を実現した。

このセンサーは、ピエゾ効果(ピエゾ抵抗型)を利用して3軸方向の加速度・傾き衝撃などを検出し、この信号をデジタル出力する。このセンサーの構造は薄いシリコンのビーム(梁)により錘(おもり)を支え、加速度で錘みが動くことでビームが歪み、この歪みをビーム上に形成したピエゾ抵抗素子の抵抗変化で加速度を検出する。

小型機器へ搭載するための高い衝撃耐性とセンサーチップの小型・薄膜化との両立をSOI(シリコン・オン・インシュレータ)ウェハーを用いたマイクロマシン技術により実現している。このセンサーチップとコントロールICチップをMCP(マルチチップ・パッケージ)技術により一体化することで薄型を実現した。これにより従来、サイズ制限や耐衝撃性の点から搭載できなかった携帯電話など小型モバイル機器への搭載を実現した。

コントロールICは、信号増幅回路、制御回路、アナログデジタル変換回路、温度補正回路などに、ピエゾ抵抗型3軸加速度センサーとしては初めてデジタルインターフェイス回路を内蔵している。これらにより機器側でのアナログデジタル信号変換を不要にし、CPUへのダイレクト接続を可能にすることにより、デジタル機器へのスムーズな組み込みを可能にした。