耐圧が900Vでオン抵抗が世界最小3.1mΩの
高性能低損失SiCパワーMOSFET




SiC用いた低損失パワーMOSFET

ロームはこのほど、次世代のパワー素子として期待されているSiC(シリコンカーバイド)を用いた低損失MOSFETを開発した。このMOSFETは耐圧900V、オン抵抗が3.1mΩp2と、世界最小のオン抵抗を更新した。

パワーエレクトロニクスの分野では、電力変換時に半導体デバイスで消費される損失が問題になっており、さらなる低損失化が求められている。しかし、従来のSi(シリコン)系パワーデバイスは技術的な限界に近づきつつあり、さらなる高効率化が困難となっている。そのため近年は、Siよりも材料物性値の優れたSiCを用いたパワーデバイスの開発が進められている。

スイッチング素子であるパワーMOSFETは、高耐圧、低オン抵抗、高速スイッチング、高放熱性の4点が要求されるが、従来のSiパワーデバイスでは、それぞれを同時に満たすことは不可能であった。

■Siパワーデバイスの限界を大きく超える特性

SiC-MOSFETは、材料特有の優れた物性により、Siパワーデバイスの限界を大きく超える特性を可能にする。

高耐圧、低オン抵抗、高速スイッチングのすべての要求を同時に満たすことができる上、高温動作、小型化、耐放射線性などSiデバイスにない要求にも応えられる。

しかし、SiCパワーMOSFETは、チャンネル部の抵抗が高いために、デバイスのオン抵抗が理論値と比較して高くなってしまうという問題があり、低オン抵抗化が困難とされてきた。

ロームでは、高移動度ゲート絶縁膜開発や微細加工技術などを駆使し、低オン抵抗を実現するために従来比3-4倍の高いチャンネル移動度を実現するゲート絶縁膜形成プロセスを開発、オン抵抗を3.1mΩp2まで引き下げることに成功した。このオン抵抗の値は同耐圧クラスのSi-DMOSと比較して約80分の1、Si-coolMOSやIGBTと比較しても約6分の1で、SiCでなければ達成できない値となっている。

また、最先端の微細加工技術を駆使して、単位面積当たりのMOSFETセル数を従来の2.5倍に高集積化することで、より低損失化を実現した。

さらに安定して高い耐圧を実現するために、微細セルの構造やガードリング構造を工夫している。耐圧は、600-900V級をターゲットに開発を進めているが、同技術によって1500V程度まではオン抵抗の増加なく対応可能であるとしている。

今回開発した技術によって単位面積当たりオン抵抗を従来の2分の1以下にできたため、デバイス作製に必要なチップ面積も2-3分の1に縮小することが可能になった。

SiCパワーデバイスは従来のSiパワーデバイスの置き換えが可能で、応用分野は家電、車載、送電など多岐にわたるため、地球規模の省エネが可能となる。

開発した低損失MOSFETは、電源、家庭用民生機器などに応用することで、機器の小型・高効率化を可能にする。また、ハイブリッド車などに応用すれば走行距離の大幅な向上にも貢献する。