EMC・ノイズ対策技術

EMC・ノイズ対策と対策部品の概要

 EMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁環境適合性)は機器が発生する電磁妨害のEMI(Electro Magnetic Interference:電磁妨害)と電磁妨害に対する感受性のEMS(Electro Magnetic Susceptibility:電磁感受性)とからなる。
一般的にEMIはエミッション(Emission)、EMSはイミュニティ(Immunity)とも言う(図1)。

EMC・ノイズ問題の発生原因と対策

 ノイズは電磁波として空中を伝搬するものと、電源線や信号線を伝導するものとがある(図2)。対策は、それぞれに発生を抑制するものと侵入を防ぐことにより行う。発生の抑制には、不必要に回路を高速化しない、回路のインピーダンスの整合を取り反射によるノイズを防ぐ電子回路的工夫、感受性の低下をバランス回路の採用により外来ノイズの影響を受けにくくする回路構成上の工夫などが基本である。しかし、これらの対策で不十分な場合は電子部品によりノイズ成分を減衰させる事が必要となる。

  そのために使用される電子部品はノイズフィルター、フェライトコア、コモンモードチョークコイル、コンデンサ、貫通コンデンサ、電波吸収シート、放電部品、バリスタ、ツェナーダイオードなど数多くある。以下に最近の話題の製品例を紹介する。


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EMC・ノイズ対策部品例

 − ノイズフィルター −
  EMIフィルターともいわれる。様々の個所で使用されることが考えられるが、電源用のノイズフィルターが多く製品化されている(写真1)。電源から侵入する雷をはじめとするノイズを除去するために用いられる。また機器内部で発生するノイズが電源から外に漏洩するのを防ぐ。このフィルターはコンデンサ、コイル、トランス、フェライトなどが使われる。ノイズフィルターはその他信号線など様々な特性のものが必要特性に応じて提供される。

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  − コンデンサ − 
  ノイズ対策としては高周波成分を除去するために使用される。単独でもインダクタンスやトランス、抵抗などと組み合わせてフィルターを構成することも多い。最近では素子の長手方向に端子を設けたLW逆転にし、コンデンサの直列列寄生抵抗やインダクタンスを減らした素子形状持つもの(写真2)や素子形状を工夫してノイズ除去に適した製品(図3)など多種提供されている。

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  − チップフェライトビーズ − 
  低周波ではインダクタンス(L)として、高周波では抵抗(R)として動作し、高周波ノイズを熱に変換し吸収する(写真3)。材料や形状の工夫によりMヘルツ帯からGヘルツ帯まで様々な特性の製品が提供されている。

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  − コモンモードチョークコイル − 
  電源線や差動信号線など2本の線に乗るコモンモードのノイズを抑圧するデバイス。コアに2本の向きを工夫した巻線を施し、差動信号はそのまま伝送し、同相信号(コモンモードノイズ)を抑圧する(図4)。信号ライン用ではチップ化された製品も提供されている(写真4)。

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− バリスタ − 
  バリスタは端子間に印加される電圧が一定以上になると急激に電気抵抗が低くなる。この性質を利用して静電気からの保護や開閉器の接点保護する素子として利用されている(写真5)。図5に特性の一例を示す。

  バリスタの特性を規定するのに規定電流が流れた時の端子間電圧をバリスタ電圧として用いる。通常規定電流は1mAを用い、V1mAと表す。素材として酸化亜鉛(ZnO)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)が良く使用されている。特性はツェナーダイオードと良く似ているが、ツェナーダイオードと異なりプラス電圧方向もマイナス電圧方向も対称の特性を示す。

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