大容量/高速に加え3次元実装技術開発や省エネ化 

半導体技術さらに進化
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 2012年、半導体技術は、さらなる進化を遂げる。システムLSIは、高集積化技術により機器に新たな機能を付加し「スマート化」に貢献する。メモリーも急増するデータ量に対応し「大容量/高速」といったニーズに応える。アナログ技術は、センサーネットワークや、タッチパネルなど新たなユーザーインターフェイスに対応するため、高速・高精度対応を強めていく。電源IC/パワー半導体は、効率をさらに高め、省エネルギー化に大きく貢献していく。

【システムLSI・メモリー】
システムLSIは、12年も微細加工技術の進化により、より多くの機能回路を集積しながら、高性能化、処理量あたりの消費電力低減を実現していく。システムLSIの最先端プロセスルールは、11年に28ナノに突入し、12年は22ナノプロセスを用いたコンピュータ用プロセッサの量産がスタートする見込みだ。

メモリーでは、スマートフォンなどの普及に支えられ需要が拡大するNAND型フラッシュメモリーでは「2Y世代」と呼ばれる19―24ナノプロセスを用いた製品の量産が始まった状況。12年は、13年の量産化をめざし、18ナノ以降の「1X世代」の開発が本格化する。合わせて、トランジスタ構造などを見直した新構造NANDメモリー(ポストNAND)の開発も行われる。DRAMでも「2X世代」の製品生産がスタートしている。

一方で、研究開発や製造コストが増大する微細加工技術に頼らない高集積化技術として「3次元半導体チップ実装技術」(3DIC)の開発も進む。これまで半導体は、面方向、2次元に機能回路を集積してきたが、3次元半導体チップ集積技術は「縦方向」「3次元」に集積していくというもの。1つの半導体パッケージに複数のチップを搭載することで高集積化を実現。さらに配線長を短縮できるため、処理性能の向上や消費電力の低減につながるとされる。3DICはまず、回路構成がシンプルなメモリーなどから適用される見込み。ロジック分野では、複数のFPGAチップをシリコン製接続基板に実装、接続した製品が実用化されるなど、徐々に3次元実装に近いマルチチップデバイスの開発が進んでいる。

【パワーデバイス】
電源向けIC/パワー半導体も、地球環境負荷低減へのニーズが高まる中で、技術開発が加速している。電力変換効率の向上、サイズの縮小、ノイズ低減などが主な技術開発項目。半導体・デバイスに電力を供給する電源ICでは、CPUやFPGAなどの微細プロセス化に伴い低電圧対応も必要となり、より安定した出力も要求されている。電源ICでは、パッケージ内にインダクタなどの外付け部品を搭載し、モジュール型の電源ICの比率が高まりつつある。外付け部品の内蔵化で、回路サイズを縮小できるだけでなく、変換効率でも向上が見込める利点がある。また40Vを超える電圧から1Vを切る低電圧の出力を1パッケージで行えるモジュール型ICも登場している。

インバータやモーター駆動などに使用されるパワーMOSFETやIGBTといったパワー半導体分野では11年は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)に代表される化合物半導体を用いたデバイスの実用化が本格化する。これらの化合物半導体は「ワイドギャップ半導体」と呼ばれ、従来のパワー半導体材料であるシリコンよりも高耐圧、高速動作、高温動作、高熱伝導という特質を持ち、電力変換を行うパワー半導体に適用することで多くの利点をもたらす。身近なところでは、パソコンなどのAC―DC電源に用いれば、電源を大幅に小型化でき、機器内に内蔵できるようになる。また太陽光や風力発電のパワーコンディショナや、電気自動車や鉄道、産業機器のモーター制御などのインバータ回路に用いることで、システムの小型化、電力変換効率の向上に貢献する。 12年は、GaN、SiCを用いたダイオードの量産化が相次ぐ見込みで、さらにGaN、SiCによるトランジスタのサンプル出荷、量産も一部でスタートする。

【アナログIC】
アナログ半導体の技術進化も進む。信号処理を行うアナログICは、デジタル化の進展に伴い重要度が増す。機器に搭載されるセンサーやタッチパネル、カメラなどのインターフェイスからのアナログ信号を処理するアンプやデータコンバータなどは、その精度や速度が機器自体の性能を大きく左右する要素であり、大きな技術革新が求められる。また、高集積化技術や、デジタル回路との混載技術も重要になっている。モバイル機器などでは、小型化ニーズが高く、アナログICも電源系を含めて、ICを統合したSoC(システムオンチップ)型のアナログICやデジタル回路を混載したミックスドシグナルICへの需要が高まる。またマイコンなどは、処理性能以上に、アナログ回路部の性能、精度を要求される場合も多く、アナログ技術、ミックスドシグナル技術の重要性が高まっている。