電子機器保護用部品
進む小型化・高性能化
携帯電話などを過電流や過電圧、雷サージ、静電気から守る
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 電子機器における安全、高信頼性に寄与する電子部品の重要性が高まっている。特に電子機器における電源は、様々な異常の発生を考慮した回路設計が要求される。過電流保護、過電圧保護をはじめ雷サージ、静電気(ESD)、過充電などが代表的でアプリケーションが要求する特性に対して多彩な電子部品が開発されている。

 スマートフォンなどの携帯機器は、電力消費を抑制して機器の動作時間を引き延ばすためにICを駆動する電圧の低電圧化技術が進展している。この結果、高い電圧を持つ静電気(ESD)に対しては従来以上に影響を受けやすい環境にあり、機器の誤動作や素子のダメージにつながるため、より適切なESD対策が要求されている。

 チップバリスタはモバイル機器における高密度実装化に進展を背景に小型化してきた。1608サイズ、1005サイズ、さらに0603サイズへと小型化シフト。現在、携帯電話のESD対策では0603サイズのチップバリスタが多く使用されるようになった。

 車載機器向けのバリスタとしては、動作温度範囲マイナス40℃〜プラス125℃でサージ耐量・エネルギー耐量を強化した製品や、JASO規格に対応したロードダンプサージ対策用チップバリスタが開発された。ロードダンプサージは、そのエネルギーが大きいため、従来はパワーツェナーダイオード、あるいは円板形バリスタが使用されていた。ここにきてECUの小型化を推進するために6.1×5.1ミリメートルの小型チップタイプが登場した。また、ハーネスからのESDノイズなどに対しては、一般タイプよりもエネルギー耐量・サージ耐量が大幅に強化されており、3216サイズの22Vでエネルギー耐量1[J]の実力を発揮する。

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サージアブソーバ、2×1.25ミリサイズ登場
 サージアブソーバは、雷サージ対策として用いられる電子部品。チップタイプでは、自動車のECU向けに3.22×1.6ミリメートルサイズをさらに小型化した2×1.25ミリメートルサイズが登場。マイクロギャップ方式を利用した放電管タイプのチップタイプでは1pF以下(実力値0.2pF)の低静電容量を実現し、高周波・高速信号ラインでのESD対策に対応。自動車向けは車載ESD規格であるISO10605規格に準拠した接触25kVの放電電圧に対応(330pF.2kΩ)している。

 通信ネットワーク分野での雷サージ対策も重要。オフィスのICT化、ネットワークの広域化に対応したLAN回線のサージアブソーバは、CaT5eの高速LAN回線(1000BASEマイナスT)に対応し、電流耐量は8/20μsマイナス5kA(カテゴリC2)、10/350μsマイナス1kA(カテゴリD1)を有する製品が開発された。DINレールへの取り付けが可能な構造としている。

 薄型テレビの電源やエアコンの雷サージ対策では5ミリメートルピッチでの自動挿入が可能なリード線タイプのサージアブソーバがある。内部素子による電界制御、トリガ線による二次電子放出機構により優れたサージ応答性を示す。また各種AC耐電圧試験に対応しており、サージ耐量を要する電源ラインの対策にバリスタと組合わせて最適な対策ができる。

 低抵抗チップ抵抗器は、電源などでの電流を検出する用途で使用される。小型で、十分な定格電力を確保しつつ、超低抵抗値を実現することが求められている。現在の低抵抗チップ抵抗器の種類は、抵抗エレメントの材料によって、厚膜、薄膜、金属箔、巻線、金属板などが揃う。

1005サイズの金属板抵抗器開発
中でも金属板抵抗器は、これまで1608サイズが最も小型で、6332サイズクラスまでサイズがラインアップ。定格電力は0.33―2W。抵抗値は15mΩ以下だった。ここにきてスマートフォンなどさらに小型化ニーズが活発化し、1005サイズ品を開発された。抵抗値10mΩで定格電力0.2Wを実現している。電流ヒューズは、もっともシンプルな回路保護用部品。

チップタイプでは、1608サイズが最小だったが、即断型の1005サイズが開発された。低内部抵抗値化によって、消費電力の低減に貢献する。定格電流3Aが可能。スマートフォンやタブレットPCおよび充電器などに用いられる。

ヒューズ抵抗器は抵抗器に溶断特性を持たせたもの。溶断電力を超えるような電流が流れると断線して半導体素子及び抵抗器自身の焼損、発火を防ぐ。回路使用上ある程度の抵抗値が必要で、しかも回路に異常が発生したときに発煙・発火することなく溶断してほしい箇所に使用する。

安全な回路を設計するには、分岐ごとに(電源短絡やモーターロックなど)異常が起きても、発煙などの事態に至らないように、回路の分岐ごとにヒューズのような安全部品を挿入することが重要である。

チップタイプでは、バッテリパックでの突入電流防止用抵抗器をはじめ、電池の周辺回路、電源回路の保護用素子として使用されるもの。1608―3216サイズが用意され、定格電力が0.063―0.125W。抵抗値は3.9―51Ω。ヒューズ抵抗器の安全規格であるUL1412を取得している。