【モバイル機器用部品・デバイス】活発な技術・製品開発

スマホやダブレットの小型・低消費電力・高性能化に対応

 モバイル機器に向けたデバイス技術の開発が活発である。今年、スマートフォン(スマホ)の出荷台数が携帯電話全体の出荷台数の半数を超えた。2017年には15億台を上回り、携帯電話全体の3分の2を超えるとの予測もある。すでにスマホの出荷台数とモバイル機器向け半導体の出荷台数は、パソコンおよびパソコン向けマイクロプロセッサを超え、さらにタブレット端末の出荷台数もパソコンを超える見通しであるといわれる。こうしたスマホを中心としたモバイル機器の急成長に対し、デバイス各社の技術開発のベクトルは「小型化」、「低消費電力化」、「高性能化」に向けられている。

<小型化、低消費電力化、高性能化に向けた技術開発>

 スマホで使われる半導体および電子部品は多種多様である。タッチパネル、液晶パネル、高性能プロセッサ、大容量DRAM、フラッシュメモリー、無線LANモジュール、GPSモジュール、加速度センサー、電子コンパス、ジャイロセンサーなど、数多くの半導体・電子部品により構成されている。スマホの筐体は、これら多数のデバイスにより飽和しつつあり、搭載部品や機能モジュールへのさらなる「小型化」要求は厳しさを増している。電子部品点数の削減と搭載面積の縮小を実現するモジュールの展開が注目される。  
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 また、モバイル機器に搭載される電池の容量は年を追うごとに向上しているが、まだ十分ではなく「低消費電力化」のニーズが高まっている。バッテリ駆動時間を延ばすため、電源関連デバイスの開発も進む。  「高性能化」では、ディスプレイの大画面化と高精細化、高精細カメラ搭載などのスマホの高機能化の進展に対応して、CPU性能やグラフィックス性能の向上が求められる。最近では、オートフォーカス/ズーム機能、電子決済、グローバル通信などの機能拡充に合わせ、様々な半導体ソリューションの提案が活発化している。

<LTE化対応とモジュール化>

 モバイル端末に共通して求められる機能として、種々のネットワークへの対応があげられる。機器側では、ストリーミング、ナビゲーション、クラウド対応など通信機能と融合した様々なサービスが提供されている。ネットワーク上の通信量は増大する一方であり、通信容量、通信周波数の確保のため、LTEバンドの搭載数が増加していく。多機能化と周波数帯のマルチバンド化が進展する一方で、RF部を構成する部品には小型化が強く求められる。しかしながら、ディスクリート製品で実現できる搭載面積の縮小は限界が来ており、集積化したモジュールの開発が求められている。複数の部品をまとめたモジュール化の動きはさらなる小型化と低背化の要求に応えるが、モジュール化における樹脂硬化や熱への耐性(耐モールド性)が重要課題となる。

<ワイヤレス給電技術の進展と課題>

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 モバイル機器やスマホの高性能化に伴い、新たな技術のイノベーションも進む。ワイヤレス給電技術もその一つであり、スマホ、モバイル機器などの身近なところから実用化が進んでいる。ワイヤレス給電の標準化団体であるWireless Power Consortium(以下WPC)がワイヤレス給電の規格策定を行う。ワイヤレス給電技術は、充電時の電源コードを不要にし、機器コネクタの防水性・防塵性の向上を見込めるため、モバイル機器市場のみに限らず産業機器、車載市場などに広がりを見せていく。また、WPCのように標準化されたシステムを用いることで一つの給電装置を様々な端末に使用することが可能となってくる。その一方で、メーカーにとっては、スマホなど5Wクラスの電力をワイヤレスで送受信するには大きな発熱が生じることが課題となる。

<センサー搭載による高付加価値化>

 モバイル機器では、センサーの搭載数も増え続けている。スマホでは、CMOSイメージセンサー、加速度センサー、電子コンパス用地磁気センサーなどの標準搭載が進んでいるほか、ジャイロセンサー、デジタル気圧センサー、照度センサーなど多彩なセンシングデバイスが搭載される。センサー後段で、データ処理を行うマイコンの機能をセンサーに混載する技術も登場している。いずれも、小型化、高画質化、高機能化に照準を合わせた技術革新が進んでおり、付加価値の高いセンサー開発が進んでいる。

<今後も伸びるモバイル市場>

 スマホをはじめとしたモバイル市場は、今後もワールドワイドで堅調な成長が見込まれる。これまで市場をけん引してきた米国をはじめとする先進国市場に加え、まだ利用者数が比較的少なく、高い経済成長が見込まれる新興国市場が伸びると期待される。特に、今後5年間ではインド、ブラジルなどで高い成長率を示すと言われている。デバイスメーカー各社は、成長を続けるモバイル機器市場に照準を当て、積極的なR&Dを推進、端末の高付加価値化に寄与する特徴ある新製品の開発を進めている。