高周波部品・モジュール開発を加速

IoT機器向けやSub1GHz帯、2.4GHz帯関連など


画像1
ロームグループのラピスセミコンダクタのCPU内蔵
1チップ無線通信LSI                   
画像1
村田製作所が 米シリコン・ラボラトリーズ社と
協業して開発したIoT機器向け高周波マッチン
グデバイス                      

 電子部品メーカー各社は高周波部品、モジュール開発を加速している。様々な機器、装置がインターネットでつながるIoT機器向け通信規格として検討が進んでいるSub1GHz帯(IEEE802.15.4)、2.4GHz帯(Wi―Fi、BLE、ANTプラス)の関連部品、モジュールの開発、製品化も進んでいる。 

 Sub1GHz帯に対応

 村田製作所が来年1月から量産を開始するIoT機器向け高周波マッチングデバイスも今後のIoT機器の増加を予想。IoT機器向けにマイクロコントローラ、ワイヤレス接続、アナログ、センサー・ソリューションを提供する業界大手の米シリコン・ラボラトリーズ社(シリコンラボ、テキサス州オースチン)と協業し、開発、製品化を進めてきたものだ。シリコンラボ製のトランシーバIC(Si4461 868MHz)に最適化したカスタムマッチング回路を2.0×1.25ミリメートルのセラミックパッケージに内蔵した。無線回路に必要な回路をすべて内蔵しているため、ユーザーの回路設計の省力化、簡素化に貢献できる。

 Sub1GHz帯(IEEE802.15.4)に対応し、HEMS/BEMS、ホーム・オートメーション、家電、玩具、センサーネットワークなどに拡販中だ。

 ロームグループのラピスセミコンダクタでも920MHz帯Wi―SUN無線通信に必要な全ての機能を業界で初めてワンパッケージ化したCPU内蔵サブギガ無線通信LSIを開発した。Wi―SUN方式はその仕様上、システムに要求するメモリー容量が大きく、これまでは必要なメモリ容量の大きさからWi―SUNに適したCPU内蔵の1チップ無線通信LSIが存在せず、対応機器開発が容易な1チップLSIによるトータルソリューションが求められていた。

新開発のCPU内蔵サブギガ無線通信LSIはCPU部に業界標準32ビットCPUコアのARM Cortex M0プラスを採用。512KBフラッシュメモリー・64KBRAMの大容量メモリーを搭載し、Wi―SUN対応無線機器で必要になる全ての機能を1チップ化した。無線通信LSIと外部MCU(パッケージサイズ9×9ミリメートルと仮定)を組み合わせた従来品と比べ実装面積を約35%削減できる。

 3月にサンプル出荷を始め、8月から量産を開始した。簡単に評価できる評価ボードとサポートソフトウエアも合わせて提供。電波認証試験に必要なテストモード対応やWi―SUN認証試験リファレンスツールの提供など、無線機器開発に向けて充実した開発サポート体制を提供している。

 従来の外部MCUが狭ピッチ端子のBGAパッケージの場合、多層基板が必要だったが、新開発のCPU内蔵サブギガ無線通信LSIは1ミリメートル広いピッチのBGAパッケージの採用と端子レイアウトの工夫により、単層基板でも部品配置が可能で、機器のトータルコストを低減できる。全てのデータ通信が暗号化されているWi―SUNは、ソフトウエアによるWi―SUN暗号処理は非常に負荷が重く、高性能かつ高速なマイコンによる膨大なソフト処理が課題になっていた。今回の新開発LSIは暗号モードに対応したハードウェア暗号エンジンとパケット処理に最適なDMAコントローラの開発でCPU不可を2000分の1に軽減。これにより性能を確保しつつ、システムの大幅な省電力化を可能にした。

 Wi―SUN方式対応の普及期待

 消費電力性能は待機時2μA、10ミリW送信時33ミリAと業界トップクラスの性能を達成。MCU部の省電力設計、RAMの分割電源オフも可能なきめ細かい電源制御、高速ウエイクアップ回路などでシステムの省電力化を実現。

 東京電力をはじめ電力各社でスマートメータとHEMSを結びBルートにWi―SUN方式を採用し、今後スマートメータの設置とともにWi―SUN方式対応のHEMS機器の普及を期待している。日本でも国内の電力不足と地球温暖化抑制のためにエネルギーの効率的な利用に向けた取り組みが緊急課題になっている。家庭においては省エネ化に向けて全家庭に通信機能を有するスマートメータを設けることでHEMSによる省エネ化が一段と進む。スマートメータ、HEMS、BEMSなどの各種エネルギーマネジメント機器、センサーネットワーク、計測機器、無線通信が必要な産業機器などでWi―SUN方式が採用され、多種多様な関連機器、サービスの創出が予想されている。