電通大など開発 学習機能を持った節電義手

手指の開閉など 数十秒で教え込み可能に


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開発した小児用筋電義手
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横井教授
 電気通信大学知能機械工学専攻脳科学ライフサポート研究センター長横井浩史教授のグループは、個々人に適応する学習機能を持った筋電制御装置と知的電動義手(筋電義手)を開発した。

 同研究成果は、筋肉に発生する生体信号である表面筋電位の計測値によってロボット制御をすることができるシステム技術と、人に応じた学習の考え方を情報処理により実用化した。

 従来の義手・義肢装具やロボットを用いたものは、重い、暑いなど身体への負担も大きく、使いこなすため長期間の訓練が必要であった。

 今回の研究成果を使うことで、義手の訓練経験がない人、体に残っている筋肉が少なくなっている人であっても、この筋電義手が容易に利用できる。

 また、3次元計測・造形技術である3Dプリンタやレーザースキャナを用い、利用者のサイズを限定することなく、乳幼児から成人サイズまで対応ができる。人に適応し、人と融合する新しいロボット実用化を目指す技術といえそうだ。

 筋電位信号を用いた手指動作ができる筋電義手では、将来の量産化による品質の維持や低コスト化を視野に入れ、構成する主要部品をモジュール化し部品販売を目指した。

 筋電制御システム、筋電センサー、モーターなどの電装系部品のモジュール化に成功。義手の手先部は、2軸(自由度)のロボットハンドとスマホやタブレット端末のタッチパネル画面上から無線で制御するシステムで構成される。数十秒の学習時間で手指の開閉などの動作を個人の筋電を使って義手に教え込むことが可能となった。

 小さな物を安定に保持するため、手のひらに相当するグローブ部品の指腹部の厚みの決定を行い、射出成型用金型開発と量産化にも成功した。

 また、乳幼児、小児向けの超小型筋電義手と成人用のユニバーサルサイズの手先部の開発に取り組み、3Dプリンタで造形できるデータを開発。製造と動作試験を3日間程度で達成できることを示した。

 既存の装飾用義手を改造し、同システムを組み込むことも可能となる。

 同研究は東名ブレース、国立成育医療研究センター、東海大学、横浜国立大学、メルティンMMIの共同で行われ、文部科学省JSPS科学研究費、JSTおよびAMED A−STEP、AMED脳科学研究戦略推進プログラムの支援を受けた。