京大と産総研 LiBの性能限界超える

新コンセプト蓄電池開発に成功

リチウムイオン電池
(インサーション型)

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 京都大学、産業技術総合研究所(産総研)などの研究グループは、NEDOプロジェクトにおいて、リチウムイオン電池(LiB)の性能限界を超える新しいコンセプトの蓄電池(リザーバ型蓄電池)の開発に成功した。

 従来不活性とされてきた電池系において、充放電特性の向上などに成功。500Wh/キログラムを見通す革新型蓄電池の基礎技術の構築に向けて大きく前進した。

 研究グループは、3月29─31日に大阪で行われた電気化学会第83回大会で発表した。

 プラグインハイブリッド自動車(PHV)や電気自動車(EV)の走行距離を伸ばすために、従来のLiBの性能をはるかに超えるエネルギー密度を持った革新型蓄電池の実現が期待されている。

 LiBは、イオンを収納する入れ物(ホスト材料)の間でリチウムイオンをやり取りする(インサーション型蓄電池)ことで充放電を行う。繰り返し充放電特性(サイクル特性)に優れるという利点を持つが、ホスト材料の重量や体積がかさむために、達成可能なエネルギー密度に限界がある。

 この入れ物をなくし金属そのものを電極として利用する新しいコンセプトのリザーバ型蓄電池にすれば、エネルギー密度は大幅に向上するが、電極材料によりサイクル特性に大きな問題を抱えることになる。電極反応生成物が電解液に全く溶解せず活性を示さない場合や、電解液に過剰溶解して散逸する場合は、サイクル特性が期待できず二次電池としては使用が困難なためだ。

 今回開発した電池は、電解液に電極の反応種が適度に溶解できる環境づくりに着目。添加剤(アニオンレセプタ)を導入し、溶解性の高い電極材料の固定化、電極―電解質界面のナノレベルでの制御などを行った。

 その結果、種々の材料において、サイクル特性や充放電特性の向上などに成功した。

 今後は出力特性、安全性なども含めて車載用蓄電池として要求される性能をさらに高め、より早期に実用化につなげていくことが期待される。