車の画像処理性能向上
2ポートタイプ内蔵SRAM ルネサスが開発

 ルネサス エレクトロニクスは車載情報機器用SoCに搭載する、2ポートタイプの内蔵SRAMを新たに開発した。この内蔵SRAMは、自動運転時代のクルマの安心・安全に貢献する、高性能なSoCに搭載する画像処理用バッファメモリー。画像データの並列処理に最適化しており、高解像度車載カメラ画像のリアルタイム画像処理による障害物認識や、フロントガラスへのAR(拡張現実)表示など、高度な画像処理を可能にする。

 今回、最先端16ナノメートルプロセスで試作したところ、0.8Vの低電圧条件で313ピコ秒の高速動作を確認した。シングルポートSRAMセルを用いながら、独立した読み出し/書き込み動作が可能な2ポートSRAM機能を実現しているため、メモリーへの高速なアクセス性能と、消費電力やチップサイズの抑制を両立している。

 近年、レーダーやセンサーを用いた自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)が普及しつつあり、将来の完全自動運転を視野に入れた技術開発も急速に進展している。その中でも、安全性を追求するためには、車載カメラで周辺環境やドライバーを画像によって認識し、ドライバーに的確に情報を提供する技術が重要となる。

 このとき、画像処理性能の向上のために、画像を細かく分けて並列処理するアルゴリズムにより性能向上を図る動きがあるが、その際に、画像バッファメモリーもこのアルゴリズムに最適化することで、より高速に画像を認識・処理・表示することが可能になる。

 同社は既に、16ナノメートルFinFET構造の内蔵SRAMとして、読み出しあるいは書き込みが可能なシングルポートSRAM、続いて同時に読み出し/書き込み動作ができるデュアルポートタイプの内蔵SRAMを開発し、ルネサスの車載情報機器用SoC「R−Car」に搭載している。

 ルネサスはさらなる実用的観点から、メモリーへのアクセス速度を維持しつつ消費電力の低減、動作下限電圧マージンの抑制、占有面積の縮小に貢献するため、シングルポートSRAMセルを用いながら、独立した読み出し/書き込み動作が可能な2ポートSRAM機能を実現する新たなダブルポンピング回路技術を開発した。さらに、FinFET構造で効果的にリーク電力を抑える低電力回路を開発し、待機時や動作時のリーク電力を約2分の1に低減することを可能とした。