折れ曲がるテラヘルツカメラ

東工大が世界初開発

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円筒形テラヘルツカメラで
注射器の内容物を検査
 東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所の河野行雄准教授の研究グループは、カーボンナノチューブ(CNT)を使い、折れ曲がるテラヘルツカメラを世界で初めて開発した。

 テラヘルツ波は、周波数が100GHzから10THz(テラヘルツ=10の12乗Hz)の電磁波で、水によく吸収される性質を利用し、植物の葉の水分の状況を非破壊・非接触で観察できる。また、紙、衣類を透過するので、空港で危険物持ち込み検査やICチップ、電子カードなどの電子部品の欠陥検査、偽造防止などに利用され、医療・薬学応用、撮像デバイス、高速通信など様々な応用の可能性が注目されている。

 一方、周波数が高く、エネルギーが低いなどから、技術的な課題がほかの周波数帯に比べ多い。画像による計測では、様々な形状に対応する必要から立体計測が欠かせず、従来のシステムでは大型化の課題があった。

 河野准教授らは、日本ゼオンのカーボンナノチューブ(SGCNT)フィルムの提供を受け、電極材料の最適化を図り、室温で液体状態のイオン化合物のイオン液体とpn接合などの新手法を取り入れ、テラヘルツ帯フレキシブルカメラを開発した。

 CNTフィルムは、加工性が良く検出器の材料として有力で、微弱なテラヘルツ光を高感度で検出し、応答強度は材料間での温度差に比例し、雑音の影響も少ない特徴をもつ。これらの特性を活用し、熱伝導率の異なる金属と組み合わせて電極を構成することで、検出器の小型化に成功した。

 pn接合では、イオン液体中の陽イオンと陰イオンが電場に沿って移動する電気二重層トランジスタを作製。厚み100マイクロメートルのCNTフィルムにおいても、pn制御を行うことが見いだされた。

 このpn接合を用いることで4倍の高感度を達成。フレキシブルデバイスに必要な強度のある厚みと高感度を両立した。また、CNTから熱放出を抑制することで、感度が約3倍に上昇。これらの成果から、フレキシブルテラヘルツ帯カメラや各種検査器を作製した。

 特に、同カメラは生体への親和性に優れていることから、外部テラヘルツ光源なしでも人体から放射されるテラヘルツ波を検知し、画像を得ることができるので、医療検査に有効な手段となることが期待される。

 同研究は、文部科学省革新的イノベーション創出プログラムにより行われた。