IBM/マイクロソフト/ボッシュ

ハノーバーメッセより、現実化へ動き出すAI工場

 4月24─28日にドイツで開かれた「ハノーバーメッセ」で、各社がAI(人工知能)やIoTを使った製造システムを展示、故障の事前予測などを行う未来の工場が現実に迫ってくる気配が感じられた。

【検査時間が8割減】

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IBMのグリーン氏

 IBMは会期中、人工知能を使った技術の製造工程への導入を目指す、新しいAI技術「コグニティブ・ビジュアルインスペクション」(CVI)を発表した。

 セミナーで、ハリエット・グリーンIoT担当ゼネラルマネジャーは「(CVIという)新技術により従来のように工場ラインで製品の欠陥を視覚的に発見して取り除く手間は省ける。これにより企業は品質向上とブランド力を高め、収益増加をもたらす」と語った。

 「UHD(超高精細級)カメラと同社のAI『ワトソン』により、製造工程で製品にできたピン先ぐらいの穴も見逃さない」とグリーン氏は強調。検査時間を従来の技術より80%削減、製造過程で発見される欠陥件数を7─10%減らすという。

【ライン作業中断短縮】

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MSの「ホロレンズ」を装着する来場者

 マイクロソフトはインダストリー4・0推進のパートナー企業を支援するためのクラウドソリューション「アジュールIoTスイート」やホログラフィックコンピュータ「HoloLens(ホロレンズ)」をデモした。

 アジュールは既に世界の企業で導入されており、トニ・タウンズウィットレー副社長によると、飲料・食品加工のテトラパックは工場の監視やシステム調整にアジュールを導入、パッケージングのライン当たりの作業中断時間を48時間短縮し、3万ユーロ(約360万円)の節約になったという。

 ホロレンズはVR(仮想現実)ではなくMR(複合現実)とMSは説明。現実世界が見えるので室内を自由に歩き回ることができる。ケーブル不要のため邪魔にならない。設計、製造、制作、訓練など多様な用途が見込めると同社は説明している。


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ボッシュのWS「APAS」を説明するアスマン氏

 自動車用部品大手のドイツのボッシュは「コロボ」(協働ロボット)の一種として、ワークステーション「APAS」をデモ。

 コネクテッド産業部門責任者のシュテファン・アスマン氏は「APASはアシスタントロボット、モジュラ型の検査システム、AR(拡張現実)機能のあるメンテナンスシステムで構成されており、APASが単独で作業するわけではない。作業者と協調や連動して動く」と説明。

 画像認識技術で部品表面の傷を自動的に検知するが、傷の許容範囲を事前にAPASは認識させておけば、ラインをその都度ストップさせる必要はない。

(C・カノッサ特派員)