センサー・画像認識技術、広がる用途、技術も高度化

 電子機器・装置の小型・高性能化や多機能化に伴い、センサー技術の高度化が進んでいる。特に最近は、モバイル端末の高機能化や自動車のADAS/自動運転化進展、IoT市場の広がりが、センシングデバイスの用途を大きく拡大している。画像処理技術の高度化も、民生・車載・産機・社会インフラなどあらゆる分野で要求されている。電子部品メーカーは、これらの市場動向を踏まえ、市場ニーズにマッチした新型デバイスの技術開発に全力をあげている。

センサー技術

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高G対応の小型加速度センター
(±32G対応)(ローム)

◇スマホ用センサー
 スマホには様々なセンサーが搭載される。特に中・高級機では多様なセンサーの標準搭載が進み、超小型センサー需要を押し上げている。

 センサーの種類別では、CMOSや加速度、電子コンパス用3軸地磁気センサー、タッチセンサーや、ジャイロセンサー、カメラ用手振れ補正センサー、照度センサー、デジタル気圧センサーなどが使用される。高級機では指紋認証センサーなども搭載され、顔認証センサーなどの搭載も本格化してきた。

 各社は、超小型・低背かつ高感度・低消費電力の新型センサー開発に注力している。

 ◇自動車用センサー

 自動車は各種車載システムを制御するため多様なセンサーが搭載される。車載センサーの用途は、ADAS/自動運転関連をはじめ、シャーシ/セーフティ系、ボディ制御系、パワートレイン系、EV/HEVの省エネ用途など幅広い。近年は「安全・安心」「快適」「自動運転」「燃費改善」などをキーワードとした車の高機能化が新たなセンシング用途を生み、自動車1台あたりのセンサー搭載量は年々増加している。

 車のドアやトランクなどの開閉検知用センサーでは、冗長性確保のため、1個のスイッチで2回路の同期切り替えが可能な製品が開発されている。ボディ系では、高精度なガラス曇り検知センサーによる快適性向上と燃費改善が提案されている。パワートレイン系では、スロットルバルブポジションプラス圧力プラス温度センサーを一体化し、燃料噴射量を最適化できる複合センサーなどが開発されている。

 ◇ロボット用センサー

 ロボットでは、キーデバイスとして多様なセンサーが搭載される。主なセンサーには、荷重検知用の圧力センサーや間接角度検出用のポジションセンサー、姿勢制御用のジャイロセンサー、加速度センサー、タッチセンサー、光学式センサーなどがある。介護・福祉用ロボットでは離床センサーなども使用される。

 センサー各社は、MEMS技術やパッケージング技術を駆使することで、汎用性に優れた高精度なロボット用センサー開発を強化。超小型かつ高分解能のセンサー開発により、ロボット用部品市場への参入が志向されている。

画像処理技術

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画像認識技術を支える
CMOSイメージセンサー

 画像認識技術の高まりとともに自動車や産業機器など幅広い領域で技術革新が起こっている。自動車においては車両前方の人や障害物を検知し、自動ブレーキやレーンキープなどに応用されている。産業機器では外観検査やロボットの物体検知などに活用され、生産ラインの自動化に大きく貢献している。

 これらの画像認識技術を支えるのがイメージセンサー。特にCMOSイメージセンサーはCMOSロジックLSIの製造プロセスを応用することで大量生産が可能なためCCDイメージセンサーに比べてコストメリットに優れ、消費電力も少ないことから主流となっている。CMOSイメージセンサーは単位セルごとに増幅幅を持つことで、光変換された電気信号の読み出しによる電気ノイズの発生が抑えられるという特徴を持つ。

 自動車などへの応用が進むにつれ、高品質で正確な画像認識が不可欠となっている。走行中の自動車は常に光の明暗が大きく異なるため、多くの課題を抱えている。CMOSイメージセンサー各社は、より広い明るさの幅を表現できるHDR(ハイダイナミックレンジ)技術の開発を進めている。明るい場所と暗い場所での明暗差をなくし、より自然でリアルな描写が可能となる。トンネルを走行中の自動車がトンネルを出た場合でも、画像が真っ白になることなく瞬時に撮像することが可能だ。

 また、車載用途ではLEDの影響によるフリッカ除去も重要となる。近年では標識や信号機などの交通設備がLED化しているほか、ヘッドライトやブレーキランプもLEDが採用されている。HDRとフリッカ除去をあわせ持つ製品も開発されている。

 イメージセンサーの技術開発とともに、画像認識によるAIやディープラーニングへの応用も始まっている。自動運転車やロボットなどの実現に画像認識技術は大きく貢献する。