NTT

土壌や生物に悪影響を与えない 土に還る電池

画像1
従来品とツチニカエルでんちRの構成比較
[引用:日本電信電話株式会社]

 NTTは無害でレアメタルフリーな低環境負荷な電池を開発した。電池部材が肥料成分で構成する土壌や生物へ悪影響を与えない電池(土に還る電池=ツチニカエルでんち)で電池動作を確認した。今後、同電池を用いた低環境負荷なセンサーを使用して土壌水分などの環境をモニタリングし、洪水、汚染、気象など、自然との共生が求められる分野で、新ビジネスの創出を目指す。

 IoTの発展に伴い、様々なセンサーが生産現場などに設置されているが、センサーや電池の交換・回収に関しては十分な議論が行われていなかった。センサーの普及に伴い、回収・再利用というエコシステムの確立が求められている。従来の電池は発火などの安全を前提として、高価なレアメタルや有害物質が使用されている。

 今回開発した電池は、低環境負荷(無害・レアメタルフリー)な材料のみで構成され、土壌・生物などへの悪影響を与えず土壌に還る「肥料成分」「生物由来材料」から選定した。

 電池の電極には酸素が拡散できる3次元の導電性多孔体構造が必要で、従来は結着剤に粉末状カーボンを固形化した構造からなる。

 結着剤はフッ素系樹脂などで構成され、燃焼時には有害ガスの発生が懸念される。そのため、無害な結着剤か結着剤を使用しない電極が望ましい。

 開発した電池には、生物由来材料に前処理を施すことで、多孔体構造のカーボン化に成功。結着剤を含まないカーボン電極を実現した。電池の動作確認では、測定電流1.9mA/平方センチメートルで、電圧1.1Vの電池性能が実現できた。同電池を数個直列につなぎ、市販の温度センサーモジュールに接続し、モジュールからの信号を受信、電池動作することを確認した。

 電池が植物に与える影響を確認するため、使用済み電池を粉砕。土壌に混合し、小松菜の発芽状態で評価を行った結果、従来の電池と異なり、植物の成長に悪影響を与えないことを実証した。