ワイヤレス電力伝送技術の開発加速


 ワイヤレス電力伝送技術の開発が加速している。スマホやEV自動車のバッテリ充電、ロボット、自動搬送機などの産業機器、監視カメラなど社会インフラ分野へ拡大し、社会に大きな変化をもたらすと期待される。電源ケーブルを不要にできれば、安全・安心な作業環境への改善、生産効率の向上などとともに、快適な住居空間も手に入る。

 コードレス・無接点で電力を伝送するワイヤレス給電(WPT)は、電磁誘導方式、磁界共振結合(共鳴)方式、電波受信方式(マイクロ波空間伝送型)などが研究・開発されている。自動搬送車(AGV)、エレベータ、移動ロボットなどに向けた1kW、200Wシステムのほか、50Wシステムはロボットアームや監視カメラなどの回転体へのワイヤレスの電力伝送が可能になるとみられる。使いやすさが向上し、バッテリ交換が不要で、自動充電による省人化を実現する。

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 メリットは接続電極がないので、電極部の劣化・摩耗などの不具合がなくなる。ガラス越しや水中でのワイヤレス給電も可能となるため、安全性・信頼性の向上やデザインが多様化できる。EVではガソリンスタンドや石油の掘削現場など、いままで電源プラグが使えなかった場所で充電が可能となり、充電設備の拡大にもつながる。

 パナソニックシステムネットワークス開発研究所は高速データと電力を近接無線伝送する無接点コネクタ技術を開発した。ワイヤレス給電の送受コイルの内側部に電磁結合・ベースバンドで数Gbpsの高速データ伝送する送受コイルを配置した。伝送距離は5─20ミリメートル(許容ずれ±10ミリメートル)。回転機構への搭載も可能だ。

【 載せるだけでやり取り 】

 情報通信研究機構(NICT)は載せるだけで電力とデータのやりとりができるシート状媒体通信システムを開発した。マイクロ波をシート内に閉じ込めることで、シートに触れるものに通信と電力を供給するシステム。電磁共鳴、電磁誘導型に比べ、シート上のみで使用できるため安全性が高く、自由に移動できることが特徴。

 電波受信方式では、数GHzの周波数を用いたマイクロ波空間伝送方式が、ワイヤレス電力伝送コンソーシアムのWGで検討が進められている。主な用途は数メートル離れたセンサー、情報端末などへの充電・給電、遠隔送電などで、送電電力は数mWから数百W。

 実用化に向けたロードマップでは、20年代初頭に商用化の実現を見込む。

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【グラフ】現在は実用化に向けた試験段階だが、35年頃には約4千億円に近い市場規模に達すると予測