NICTと東京大学

てんかん発作を脳波から自動検出するAI開発に成功

 情報通信研究機構(NICT)と東京大学は、脳波からてんかん発作を自動検出できる人工知能(AI)の開発に成功した。

 脳の一部が異常かつ過剰な活動を起こすと、突然けいれんを生じたり、意識を失ったりする「てんかん発作」を起こす。

 てんかんの診断には、脳波検査が欠かせない。診断は、てんかん専門医の専門知識と経験に加え、膨大な検査データの精査に長時間を要する大変な作業だった。このような診断の負担軽減のためにも、脳波から、てんかん発作を自動検出できる手法が強く求められていた。

 同研究では、脳波データを脳波計の画面に出力されるような画像に変換し、これらの無数の画像をAIに学習させることを試みた。試みの動機は、てんかん専門医が脳波を精査するとき、脳波を時系列データとして数理的に解析しているわけではなく、自らの経験に基づいて、脳波計の画像の特徴から「視覚的に」判断していると考えたことにある。

 ビデオ脳波モニタリング検査を実施した24人から得た合計1124.3時間の脳波データを解析対象とした。これらの検査データから作成した脳波画像を深層畳み込みニューラルネットワークに学習させたところ、市販のソフトウエアにおける既存手法を大きく上回った。

 今後、様々な脳波データを集積すれば、専門的な知識と経験を備えたてんかん専門医に勝るとも劣らない、てんかん発作を検出できるAIの開発の可能性が示された。将来的には、てんかん専門医が不足する地域でも、専門的な脳波診断を提供できるようになると期待される。

 時系列データを画像に変換した上で画像認識技術を適用する手法は、てんかん発作以外の脳波診断や生体信号解析をはじめ、様々な用途への応用が考えられる。